オンデマンド印刷、オフセット印刷、デジタル印刷の違いとクオリティについて
オンデマンド印刷、オフセット印刷、デジタル印刷とは
オンデマンド印刷とは
オンデマンド印刷は、「必要な時に、必要な分だけ印刷する」という考え方に基づく印刷方式です。一般的には、デジタルデータから直接出力するデジタル印刷の代名詞として使われており、版を作らずに印刷できるのが特徴です。
そのため、短納期かつ低価格で対応できる点が評価されており、過去の活用実績から「品質はほどほど、でも早くて安い」というイメージが定着しています。
ただ、近年は技術進化も進んでおり、少量多品種やパーソナライズ印刷といったニーズにも柔軟に対応できるようになってきています。
オフセット印刷とは
オフセット印刷は、「平版印刷」とも呼ばれる版を使用した印刷方式で、大ロット印刷において非常に優れたコストパフォーマンスを発揮します。版に一度インクをのせ、それをブランケット(中間転写体)を介して用紙に転写するという仕組みで、インクが直接紙に触れない構造になっているのが特徴です。
この方式は、19世紀にその原型が開発されて以降、技術的な改良を重ねながら発展してきました。現在でも、カタログ・チラシ・雑誌など大量に印刷される紙媒体の多くがオフセット印刷によって作られており、印刷業界の主流技術として根強く使われています。
最大の特長は、インクが均一にのることによる高い画質の再現性と、大量印刷時の安定性。版を使うため初期費用はややかかりますが、部数が増えるほど1枚あたりのコストが下がっていくため、大ロットにおいて非常に効率的な方式と言えます。

デジタル印刷とは
デジタル印刷は、版を使用せず、デジタルデータから直接印刷する方式で、特に小ロット印刷において高いコストメリットがあります。印刷準備の手間が少なく、データを送ればすぐに印刷できるという手軽さから、多品種・短納期のニーズに対応しやすいのが特徴です。
印刷方式としては大きく分けてインクジェット方式とトナー方式があり、それぞれに特化した技術開発が進められています。特に近年では、印刷機メーカー各社がこの分野に力を入れており、印刷品質や表現力も飛躍的に向上しています。
また、版を使わないことで用紙ロスや資源の消費を抑えられるため、環境負荷の低減という点でも注目されており、SDGsの観点からも需要は年々拡大しています。
さらに、使用されるインクや印刷機の性能によっては、オフセット印刷よりも広い色域を再現できる場合もあり、鮮やかな発色を活かした高付加価値な印刷にも活用され始めています。

オフセット印刷とデジタル印刷の違いについて
オフセット印刷、デジタル印刷の主な違いを簡潔にまとめたものです。それぞれの印刷方式にはメリットとデメリットがあり、印刷物の内容や目的に合わせて最適なものを選ぶことが重要です。
オフセット印刷 | デジタル印刷 | |
---|---|---|
印刷方式 | 画像部(インクが付着する部分)と非画像部が形成された版を利用し、ブランケットを介して紙にインクを転写する印刷方式 | デジタルデータから直接印刷する印刷方式(インクジェット方式・トナー方式) |
版 | 必要 | 不要 |
コストメリットのある 印刷ロット | 大ロット | 小ロット |
納期 | (デジタル印刷と比較して)製版・刷版工程に日数が必要 | (オフセット印刷と比較して)製版・刷版工程を短縮 |
品質 | 印刷機の性能に加えて、印刷オペレーターの経験・能力により品質の差が出やすい | 印刷機の性能や印刷データの良し悪しにより品質の差が出やすい |
代表的な印刷方法 | 活版印刷、平版印刷など | インクジェット印刷、レーザープリンターなど |
メリット | 大ロットのコスト低減、安定した品質(成熟した技術) | 小ロットのコスト低減、短納期、バリアブル印刷(可変印刷)、在庫削減、環境負荷低減 |
デメリット | 小ロットのコスト高(初期費用が高い)、一定の納期、環境負荷 | 大ロットのコスト高、対応用紙の種類が限定的 |
主な用途 | 書籍、雑誌、カタログ、ポスター、パッケージなど | オフセット印刷と同じ用途で、小ロット、短納期の場合など |
印刷の質について
オフセット印刷のほうが質が良いと言われる理由
オフセット印刷の歴史は古く、100年以上の技術の蓄積により、成熟した印刷方式として高い品質と安定性を実現しています。それまでの活版印刷と比較して、鮮明できれいな画像や活字を簡単に印刷することができるため、以来今日に至るまで、最も広く普及した印刷方式として定着しています。特に、大面積のグラデーションや、細かい線画の再現性、色の再現性において優れています。一方、デジタル印刷は1990年代ごろから普及し始めました。印刷機の性能や素材の開発がまだまだ初期段階ということもあり、当初は繊細な線画や滑らかな色のグラデーションなどオフセット印刷の品質には程遠い状況でした。しかし、小ロットのコストメリットやオンデマンド性など、デジタル印刷の利点が理解されるにつれて需要が増え、印刷機メーカーの開発が進むことで、近年のデジタル印刷技術は飛躍的に向上し、印刷品質においてもオフセット印刷と遜色ない水準に達しています。現在では、用途に応じてオフセット印刷、デジタル印刷を選択できる時代に入っています。
インクの乗りと安定性
・油性インク: 紙への定着性が良く、発色が鮮やかで、耐水性・耐久性にも優れています。
・均一なインク層: 版からブランケット、そして紙へとインクが転写される過程で、インクの層が均一になりやすく、ムラのない美しい仕上がりになります。
階調表現
・滑らかなグラデーション: オフセット印刷は、繊細な階調表現に優れています。写真のグラデーションや、絵画の微妙な陰影などを忠実に再現することができます。線数を細かくすることでさらに高精細な階調表現も可能になります。
色の再現性
・広色域: オフセット印刷は、通常のCMYKインクの加えて特色インクを使用することで、CMYKインクで表現できる色域より広範囲の色を再現でき、鮮やかで豊かな色彩表現が可能です。
・色合わせの精度: 長年の経験と技術により、非常に高い精度で色合わせを行うことができます。
紙への定着性
・耐久性: 紙への定着性が強いため、印刷物が長期間にわたって色褪せしにくく、耐久性があります。
・乾燥速度: インクの乾燥速度が速いため、速乾性が必要な場合に有利です。但し、紙の種類によってはインクが裏移りしたり、定着性が劣る場合があります。
最新のデジタル印刷は
オフセット印刷レベルになっている


※写真提供:小学館

最新のデジタル印刷は、オフセット印刷と比較して遜色のない水準まで品質が向上し、印刷色域をはじめオフセット印刷を凌駕する側面もあります。
最新のデジタル印刷がオフセット印刷に近づいた理由
・インク技術の向上: インクジェット技術の進歩により、インクの粒子が細かくなり、より滑らかな階調表現が可能になりました。
・印刷解像度の向上: 印刷解像度が大幅に向上し、細かい文字や線画も鮮明に再現できるようになりました。
・色域の拡大: 印刷できる色域が拡大し、より幅広い色を再現できるようになりました。
また、小ロット、短納期、バリアブル印刷(可変印刷)といった、オフセット印刷では実現しにくいメリットも併せ持っています。
印刷の費用について
オフセット印刷
一般的に、印刷部数が増えるほど(一定の部数まで)印刷単価が下がっていくことから、大ロットの印刷にコストメリットがあります。一方、版を作成するための製版・刷版の費用、印刷工程における色合わせの調整作業やそれに必要な予備の用紙費用など、量産に至るまでの初期費用がかかることから小ロットの印刷では割高感があります。
デジタル印刷
デジタルデータから直接印刷できるので版を作成する必要がなく、また、印刷工程の色合わせの調整作業が最小限のため用紙の予備もわずかで済み、オフセット印刷と比較して初期費用を抑えられることから、小ロットの印刷にコストメリットがあります。一方、一般的に、印刷ロットに関わらず印刷単価が一定のため(例えばコピー機の料金設定など)、大ロットの印刷になればなるほど印刷費がオフセット印刷より高くなる傾向にあります。
印刷用紙について
オフセット印刷
流通している印刷用紙の多くはオフセット印刷に対応することを前提に製造されているため、手漉き和紙のような特殊な用紙や、印刷機を通らない紙厚(厚い・薄い)の用紙を除けば、さまざまな種類の用紙を使用することができます。
デジタル印刷
印刷機によっては専用紙(鮮明な印刷面を保持するために、インクのにじみをコントロールする材料(プライマー)が塗布(プレコート)されているなど)を推奨するなど、オフセット印刷と比較して使用できる用紙の種類は限定的です。印刷品質を担保するため「用紙」の方を改良した結果、選択できる用紙が少ないという側面があります。
NISSHAが印刷可能な印刷用紙についてはこちら
印刷物と印刷方式について
印刷方式 | ニーズ・特徴 | 具体的な用途 |
---|---|---|
オフセット印刷 | 大ロットの印刷で高品質な仕上がりが必要な場合 | チラシ(新聞折込、交通機関・公共施設向け)、フリーペーパー |
大量のテキストや写真を高品質で印刷したい場合 | 書籍、雑誌、カタログ | |
鮮やかな色で印刷したい場合 | ポスター | |
光沢紙や厚紙など、特殊な紙に印刷したい場合(一部のデジタル印刷機も可) | 製品パッケージ、書籍のカバー・表紙 | |
デジタル印刷 | 小ロットで印刷したい場合 | チラシ(限定配布)、書籍・カタログ(再版/増刷)、自費出版物(個人ユーザー) |
短納期で在庫を抱えずに必要に応じて印刷したい場合 | チラシ・カタログ・書籍(オンデマンド方式) | |
個人ごとに異なる情報を印刷するなど可変データを印刷したい場合 | DM、名刺 |
オフセット印刷、デジタル印刷のメリットとデメリット
印刷物の種類、数量、納期、予算、品質など、様々な要素を考慮して最適な印刷方式を選ぶ必要があります。
印刷物の特徴・用途に合わせて、最適な印刷方式を選択しましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
オフセット印刷 | ・大ロット印刷のコスト低減:版を作成することで、量産時のコストを低減できます ・高品質な印刷:均一なインク層を形成し、高品質な印刷物を作り出すことができます ・色の再現性:広範囲の色を再現でき、鮮やかな色彩表現が可能です ・長寿命:印刷物が長期間にわたって色褪せしにくく、耐久性があります | ・小ロット印刷のコスト:版の作成など初期費用が必要となり、少量の印刷物では割高感があります ・納期:版の作成や印刷の準備に時間がかかるため、一定の納期が必要です ・環境負荷:デジタル印刷と比較してインクや用紙の使用量が多く、また水を使用するため、一定の環境負荷がかかります |
デジタル印刷 | ・小ロット印刷のコスト低減:版の作成など初期費用が不要なため、少量の印刷物のコストを低減できます ・短納期:版の作成が不要なため、短納期で印刷できます ・バリアブル印刷(可変データ印刷):1枚ごとに異なる内容の印刷が可能です ・柔軟性:オンデマンド性があるため何度でもデータを修正しながら印刷できます ・環境負荷の低減:オフセット印刷と比較して用紙の使用量が少なく、また水を使用しないため、環境への負荷を低減できます | ・大ロット印刷のコスト:印刷ロットが大きい場合、オフセット印刷と比較してコストが高くなる傾向にあります ・用紙の種類:オフセット印刷と比較して、使用できる用紙の種類が限定的です ・インクの粒状性:インクジェット方式では、インクの粒子が目立つ場合があります |
NISSHAのデジタル印刷 NDPについて
色の再現性が高く、印刷の質が良い
印刷事業の長い歴史の中で培ってきた、カラーマネジメント技術や熟練した印刷オペレーションのノウハウをデジタル印刷に活用することで、高性能なデジタル印刷機の能力を最大限に引き出し、高品質な印刷を実現しました。これまで品質的には、オフセット印刷には遠く及ばないとのイメージが先行していたデジタル印刷ですが、NDPはその評価を一変させる水準までデジタルカラー印刷の品質を向上させています。精度の高い色の再現性やオフセット印刷よりも広い色域の印刷表現により、印刷の新たな可能性を広げます。

さまざまな用紙に印刷可能
従来のデジタル印刷では、専用紙が推奨される場合があるなど、オフセット印刷と比較して選択できる用紙は限定的でしたが、印刷方式(UVインクジェット)の特性や通紙テストを重ねることで、数百種類以上の用紙に対応できるようになりました。オフセット印刷と同じように、さまざまな用紙の質感を生かした印刷物を製作することができます。

多品種小ロットに対応
版を必要としないデジタル印刷の特性を生かして、多品種小ロットの印刷物に対応できます。これまでの実績でも、300種類以上のカードのような印刷物や展示用に1部だけ必要な冊子など、小ロットでも高品質な印刷物を届けてきました。在庫を抱えずに書籍を出版したい、パイロット版として必要最小限の部数だけ印刷したいなど、お客さまのニーズに合わせて、NDPをご活用いただけます。

NDPを使った本や雑誌の制作はNISSHAにお任せください
当社が提供するNDPは、高品質デジタルカラー印刷のパイオニア的サービスとして、出版社さまをはじめ、小規模でも高品質な本づくりを実現したいすべての方にご利用いただける印刷サービスです。ぜひ一度、NDPを使って本づくりをしてみませんか。
