印刷用紙には、コート紙や上質紙といった定番から、ヴァンヌーボやマーメイドに代表される特殊紙・ファンシーペーパーまで、無数の種類があります。このページでは、書籍・写真集・図録・カタログなどの印刷でよく指名される52銘柄を、「ラフ・ナチュラル」「エンボス」「和様」「透明・半透明」「鏡面・光沢」「アート・コート」「上質」「厚紙」の8カテゴリーに整理し、銘柄ごとの風合い・規格・主な用途を一覧で解説します。あわせて、小部数でも特殊紙を使えるデジタル印刷での扱いにも触れています。500種類以上の用紙への通紙実績を持つNISSHAのデジタル印刷サービス「NDP」の知見をもとにまとめました。お目当ての銘柄がある方はページ内目次から、初めて用紙を選ぶ方は次の「印刷用紙の基本分類」からご覧ください。
印刷用紙の基本分類|塗工紙・非塗工紙・特殊紙の違い
印刷用紙は、表面に塗料を塗っているかどうかで大きく「塗工紙」と「非塗工紙」に分かれます。塗工紙はコート紙やアート紙に代表される、白い塗料で表面を整えた紙で、写真やカラーの再現に優れます。非塗工紙には上質紙や多くのファンシーペーパーが属し、紙本来の手触りと落ち着いた発色、筆記のしやすさが持ち味です。両者の中間には、ごく薄く塗工して風合いと再現性を両立させた微塗工紙があります。
これに加えて、エンボスやパール塗工、アルミ蒸着といった加工で個性を持たせた特殊紙(ファンシーペーパー)、厚みと剛度を持つ板紙(カード紙・アートポスト)、さらにPETのような紙以外のシート素材まで含めると、印刷で使える「紙」の世界は一気に広がります。本ページの8カテゴリーは、この分類を「見た目と手触り」から選びやすいように再編成したものです。
| 分類 | 主な特徴 | 本ページの主な該当カテゴリー・銘柄例 |
| 非塗工紙 | 塗料を塗らず、紙本来の風合いを生かした紙。発色は落ち着き、筆記性に優れる | 上質紙(OKプリンス上質、npi上質)/ファンシーペーパーの多く(アラベール、マーメイド) |
| 微塗工紙 | ごく薄い塗工で、風合いと印刷再現性を両立 | ラフ・ナチュラル系の多く(b7トラネクスト、テイクGA、Aライトスタッフ) |
| 塗工紙 | 白い塗料で平滑性と発色を高めた紙。仕上げはグロス/ダル/マット | アート・コート(SA金藤、OKトップコート、ニューVマット)/ラフグロス(ヴァンヌーボ、Mr.B) |
| キャストコート紙 | 鏡面ドラムで乾燥させ、鏡のような強光沢に仕上げた塗工紙の最上位 | 鏡面・光沢系(エスプリ) |
| 特殊紙(加飾紙) | エンボス、パール塗工、アルミ蒸着などの加工で個性を持たせた紙 | エンボス(クロコGA、レザック66)/和様(新局紙)/鏡面・光沢(ペルーラ、アルブライト) |
| 板紙(厚紙) | 厚みと剛度のある紙。表面塗工した高級白板紙が印刷用途の主役 | 厚紙・カード紙(OK特アートポスト、F1カード、アイベストW) |
| 紙以外のシート | PETなどの樹脂素材。透明性や耐水性など紙にない機能を持つ | 透明・半透明(A-PET、NTパイル) |
使いたい質感のイメージが決まっている方は、各カテゴリーの解説へお進みください。銘柄名で探す方はページ内目次から直接ジャンプできます。
ラフ・ナチュラルな風合いの印刷用紙(嵩高紙・ラフグロス)13銘柄
コート紙のような均一な光沢ではなく、紙そのものの手触りと嵩を生かせるのがこのカテゴリーの用紙です。大きく分けると、低い坪量で厚みを出せる「嵩高紙」、ラフな紙肌なのにインキが乗った部分だけ光沢が現れる「ラフ・グロス」系、そして塗工をあえて施さない非塗工のファンシーペーパーの3タイプがあります。なお「ラフ・グロス」は株式会社竹尾の登録商標で、ヴァンヌーボの発売後に同様のコンセプトを持つ銘柄が増えたため、それらを総称するカテゴリー名として使われるようになりました。書籍や写真集、図録の造本で最も指名の多いゾーンであり、デジタル印刷でも銘柄選びの相談が集中する用紙群です。
b7トラネクスト|書籍で定番の嵩高微塗工紙
日本製紙が製造する嵩高微塗工紙で、2002年に「Be-7」として販売が始まり、2009年の規格変更を機に現在の銘柄名になりました。嵩高紙とは繊維の隙間に空気を含ませることで、通常の紙より軽くて厚い紙のことです。発売当時、嵩高紙には経年で黄ばみやすいという課題がありましたが、b7トラネクストの前身であるBe-7は変色しにくく滑らかな紙質を実現し、その後の嵩高紙ブームの先駆けとなりました。
ラフで優しい風合いを持ちながら微塗工により色の再現性が高く、ファンシーペーパーを使わずにラフ感を出したい、単価は抑えたいという案件に向いています。74〜200μmという幅広い紙厚があり、不透明度が高く、しなやかな紙腰でめくりやすいのも書籍本文用紙として支持される理由です。用途は書籍、ムック、雑誌からカタログ、図録、カレンダーまで幅広く、現在の出版業界ではスタンダードな銘柄のひとつです。シリーズには書籍向けに自然な白さを持たせたb7ナチュラル、クリーム色のb7クリームもあり、本文の可読性を優先する場合はそちらも選択肢になります。
デジタル印刷との相性も良好な部類です。微塗工で表面が整っているためトナーの定着が安定しやすく、嵩高紙特有の「軽いのに厚い本」をオンデマンドの小部数でも再現できます。
b7バルキー|さらに低密度で柔らかなラフ調塗工紙
b7シリーズの中で最も低密度なタイプです。東日本大震災からの復興過程にあった日本製紙石巻工場の8号抄紙機で開発され、2012年4月に発売されました。白色度92%のすっきりした白さを持つラフ調塗工紙で、基幹銘柄のb7トラネクストと比べてさらに低密度にすることで柔らかさを実現しています。上質紙ベースのため保存性に優れている点も、長く手元に残る書籍に向いた特性です。
「軽い、厚い、白い、柔らかい」という近年の本文用紙ニーズに応えた設計で、微塗工上質マット系では最高レベルの紙厚を持ち、米坪展開も豊富です。雑誌や書籍の本文のほか、ページ数が少ない冊子にボリューム感を持たせたい場合にも有効です。デジタル印刷では、柔らかくめくりやすい紙腰がフォトブックや自費出版書籍の仕上がりに寄与します。
Aプラン|淡い色揃えのリーズナブルな非塗工ファンシー
1993年5月発売のロングセラーで、日本製紙が製造し平和紙業が販売する非塗工の高級印刷用紙です。ソフトな肌合いと淡い色揃えが持ち味で、穏やかで落ち着いた印刷仕上がりになります。上質紙に比べて15〜20%ほど厚みがあるため、同じページ数でもふっくらとした造本になります。
カラーはローズホワイト、アイボリーホワイト、スカイホワイト、ナチュラルホワイト、ピュアホワイトなど淡い白系の展開で、ファンシーペーパーとしては手頃な価格帯です。連量は四六判55〜160kgと幅広く、会社案内や記念誌、案内状、書籍まで対応できます。2021年10月生産分からFSC森林認証紙へ順次移行しており、2023年8月生産分からはバガスパルプの配合が中止されていますので、環境表記を入れる場合は仕様の時点確認が必要です。非塗工のため発色はやや沈みますが、その落ち着きこそがこの紙の選ばれる理由でもあります。
Aライトスタッフ|ラフグロス調をコストバランスよく
正式名称は「AライトスタッフGA-FS」。竹尾が販売する銘柄で、名称は製造元である三菱製紙の登録商標です。2010年6月に品質向上を機に「ライトスタッフGA-FS」から現名称へ変更されました。印刷適性とナチュラルな風合い、コストバランスを兼ね備えた微塗工印刷用紙という位置づけです。
マット系ながらインキが乗った部分に若干のグロス感が出るため、ヴァンヌーボVGやMr.Bに似た風合いを持ちながらコスト面で優れる用紙として人気があります。連量は四六判90・110・135kgで、厚手が必要な場合は同系の「ライトスタッフGA(N)A-FS」が用意されています。名刺、カード、挨拶状からパンフレット、カタログまで幅広く使われ、箔押しやエンボスなどの加工適性も良好です。
注意点はインキの乾きにくさです。濃色でインキ総量が300%を超えるようなデザインは乾燥に時間がかかり、裏移りの原因にもなるため、オフセットでは絵柄設計に配慮が要ります。逆に言えば、乾燥工程のないトナー方式のデジタル印刷では、この弱点が問題になりにくいのがポイントです。
MTA+-FS|「アート紙を超える紙」を目指した高級塗工紙
「アート紙を超える紙」をめざして2010年に開発された、竹尾オリジナルの高級塗工印刷用紙です。ややラフな風合いを生かしたダル調の仕上げで、印刷面には上質なグロス感が出ます。落ち着いた白と高い印刷適性を持ち、階調表現が求められる写真印刷、特に図録やカレンダーに適しています。
連量は90kgから200kgまで広く揃い、書籍本文からカード、パッケージ的な用途まで1銘柄でまかなえるのが実務上の強みです。FSC森林認証紙で、竹尾のGAシリーズに属します。ヴァンヌーボほどラフに振らず、アート紙ほど平滑に寄せない中間的な立ち位置のため、写真の再現性と紙の質感を両立させたい図録・作品集の本文用紙として検討価値の高い銘柄です。
テイクGA|白く細やかな風合いのコスパ型微塗工紙
正式名称は「テイクGA-FS」。印刷適性と白さ、細やかな風合いを持つ竹尾の微塗工印刷用紙で、コストバランスの良さからパンフレットやフライヤーなど幅広い印刷物に使われています。程よいラフな質感と色再現性を持ちながら、ヴァンヌーボシリーズと比べるとリーズナブルで、「質感は欲しいがコストは抑えたい」という要望に応える紙として、企業のカタログやポスターでの採用実績が豊富です。
2022年3月には厚物の「テイクGAボード-FS」が追加され、シリーズ合計で104.7g/㎡から400g/㎡までの厚さが揃いました。冊子の表紙と本文を同じ質感で統一したり、パッケージや並製表紙に展開したりできます。
Mr.B|しっとりマットな地合いに力強いグロスの印刷面
特種東海製紙の高級塗工印刷用紙で、ラフ・グロス系を代表する銘柄のひとつです。印刷面には光沢が出て、それ以外の部分はしっとりとしたマット調という独特の風合いが魅力です。姉妹品のミセスB-Fと比べて表面が粗く、ベタ印刷では紙の凹凸が陰影となって力強いコントラストを生みます。写真やイラストをダイナミックに見せたい表紙・カタログに向いた性格です。
色は白色度の高い順にスーパーホワイト、ホワイト、オフホワイトの3色。デザイン関係やウエディング関係からの人気も高く、カタログ、パンフレット、フライヤー、名刺などのカード類まで幅広く使われています。ヴァンヌーボとよく比較されますが、Mr.Bのほうが印刷部のグロスがやや強く出る傾向があり、絵柄のメリハリを重視するならMr.B、風合いの繊細さならヴァンヌーボ、という選び分けが一般的です。
ミセスB|しなやかなコシで本文用紙に最適
正式名称は「ミセスB-F」。特種東海製紙が2001年に発売した高級印刷用紙で、FSC認証版を経て2011年に現在の名称になりました。緻密な印刷表現力としなやかな手触りを両立した高級塗工印刷用紙で、Mr.Bのようなギラつきのない、落ち着いた光沢が印刷面に現れます。
Mr.Bが「表紙・ビジュアルの紙」だとすれば、ミセスB-Fは肌理の細かさとめくりやすさを生かした「本文の紙」です。写真集や作品集の本文、企業の上質なパンフレットなどで、繊細なグラデーションを落ち着いたトーンで見せたい場合に選ばれます。スーパーホワイトは白さが際立ち、シャープな仕上がりになります。
ヴァンヌーボ|ラフ・グロスという概念を生んだ代表銘柄
デザイナー・建築家の矢萩喜從郎氏の監修のもと1994年に誕生した、竹尾を代表する高級印刷用紙です。銘柄名はフランス語の「新しい風(VENT NOUVEAU)」に由来し、紙の風合い(ラフ)と印刷再現性(グロス)を両立する「ラフ・グロス」というカテゴリーそのものを確立しました。空気を多く含むため軽くて嵩高く、厚くて軽い書籍がつくれること、インキの重ね具合によって微妙なニュアンスの光沢が出ることが最大の特徴で、写真集・作品集・ブランドカタログの定番として30年にわたり支持されています。
シリーズ展開が豊富な点も指名される理由です。スタンダードのV-FS(V=Visual)を軸に、印刷部のグロス感を強めたVG-FS、印刷部がマットに仕上がるVM-FS、手触り感を重視したF-FS(F=Feeling)、平滑性と印刷作業性を高めたスムース-FSがあり、同じ「ヴァンヌーボの世界観」の中で仕上がりを細かく選べます。
そしてデジタル印刷においては、専用の「ヴァンヌーボDigitalシリーズ」が存在します。HP Indigoデジタル印刷向けに開発されたLT-FSは、特殊表面加工で網点再現性を高め、オフセット印刷に近い光沢度でヴァンヌーボ特有の印刷部グロスを実現します。
エアラス|空気を含んだ嵩高と緻密な再現性を両立
特種東海製紙が製造するラフ・グロス系の用紙で、airus(エアラス)の名が示す通り、空気をたっぷりと含んだ嵩高な肌触りと緻密な再現性を持ち、特に写真集や図録で魅力を発揮します。
技術的な個性は塗工方式にあります。「カーテンコーター」と呼ばれる方式で塗料を均一に載せているため、ムラのない塗工面が得られ、網点の欠けを最小限に抑えた緻密な印刷表現が可能です。また四六判80kgでMr.Bの90kg相当の厚みがあり、約10%の軽量化につながります。ページ数の多い写真集や図録を「重くせずに厚く」仕上げたいときに効く特性です。ラフ・グロス系の中では表面が比較的なめらかで、繊細なトーン再現を優先する案件に向いています。
アラベール|画用紙のような手触りの定番ファインペーパー
繊細な風合いと優しい手触りをもつ非塗工印刷用紙として開発され、1989年に発売されました。正式名称は「アラベール-FS」で、竹尾のファインペーパーを代表するロングセラーです。「画用紙のよう」とも表現される紙本来の手触りが魅力で、非塗工紙でありながら印刷適性が比較的高く、商業印刷で広く使われてきました。
カラーは白系のナチュラル、ホワイト、スノーホワイトに高白色のウルトラホワイトを加えた4色と、落ち着いた色合いの5色の計9色展開。厚さは四六判70kgから200kgまでの6段階(色物は70kgと200kgの設定なし)です。名刺やカード、パンフレット、画集、封筒まで用途は広く、非塗工ゆえに筆記性も高いため、メッセージカードや招待状にも好適です。
ヴァンヌーボとの違いはよく質問されるポイントです。非塗工のアラベールは発色がやや沈む一方で表面の凹凸感が強く、素朴で温かい仕上がりに、微塗工のヴァンヌーボは色の再現性で勝ります。鮮やかさより落ち着きと手触りを優先するならアラベール、と覚えておくと選びやすい銘柄です。
ジェントルフェイス|しっとりした風合いの高級塗工紙(後継はジェントルS)
平和紙業が販売する高級塗工印刷用紙「ジェントル」のフェイスタイプで、しっとりとした落ち着いた風合いと、ボリューム感のある印刷表現が持ち味です。ラフな微塗工の紙面はいわゆる「ふわっとグロス」系で、2010年にFSC森林認証を取得しています。
OKアドニスラフ|がさっとした紙肌が懐かしい嵩高中質紙
王子製紙が製造・販売する嵩高中質紙で、非塗工のシリーズです。わら半紙を思わせるざらつきのある肌触りが最大の個性で、適度な厚みがあるためページ数の少ない本でもボリューム感を出せます。素材感のある色相とがさっとした肌感がどこか懐かしく、装丁家にも人気のシリーズで、コミックや雑誌の1色ページに加え、近年はZineやリトルプレスの本文用紙としての採用が増えています。
ラインナップは白色度70%のアドニスラフ70、白さと厚みのバランスが良い75、白さを追求した80、そして80をベースにさらに白色度を高めたアドニスラフWがあります。留意点として、中質紙のため経年での黄ばみが出やすく、表面がざらついている分、紙粉が発生しやすい性質があります。長期保存前提の記念誌より、時代感や素材感を「味」として生かす出版物・冊子に向いた紙です。1色のテキスト主体のデジタル印刷とは好相性ですが、ベタの多い絵柄では紙肌によるかすれ・ムラが出やすい点は織り込んでおきましょう。
エンボス紙(型押し・凹凸のある印刷用紙)9銘柄
紙の表面に立体的な模様を持たせたのがエンボス紙です。凹凸のつくり方は大きく2通りあり、製紙工程で織り模様のついたフェルト(毛布)を押し当てて風合いを転写する「フェルトマーク」と、抄き上がった紙に彫刻ロールなどで型押しをする「エンボス加工」があります。いずれも見た目だけでなく手触りで印象を残せるのが最大の持ち味で、冊子の表紙、パッケージ、名刺、招待状といった「手に取ってもらう」印刷物で選ばれます。
印刷にあたっては共通の注意点があります。凹んだ部分にはインキが届きにくく、ベタや写真ではかすれ・白抜けが出やすいことです。これを欠点と見るか素材の味と捉えるかで設計が変わります。小さな文字や精細な写真は避け、紙色を生かしたワンポイント表現や、箔押し・空押しとの組み合わせが定石です。デジタル印刷ではトナーやインクが凹部に定着しにくい傾向があるため、エンボスが深い銘柄ほど事前のテストが重要になります。
なお、本カテゴリーのうち銘柄名に「GA」が付くものと「い織り」は、竹尾のT-EOS(ティオス|竹尾エンボスオーダーシステム)シリーズに属します。共通の原紙にエンボスパターンだけを変えて展開する仕組みで、19種のエンボスと最大50色の組み合わせにより、常備品だけで約1,100種、別注を含めると約2,600通りから選べます。
クロコGA|クロコダイル革を模したエンボス紙
竹尾のT-EOSシリーズに属するファインペーパーで、その名の通りクロコダイルの皮革をイメージしたエンボスパターンが施されています。シリーズの中でも凹凸が深くはっきりしたタイプで、視覚と触覚の両方に訴える高級感が持ち味です。カラーは黒、マホガニー、極・焦茶、しんくなど風格のあるダークな濃色を中心に約30色。白系ではプラチナホワイトのみ表面に微塗工が施されており、オフセット印刷での再現性を高めた仕様になっています。
この紙が最も輝くのは加飾加工との組み合わせです。深いエンボスの上に艶のある金箔・銀箔を押すと、凹凸によって輝きが立体的に強調され、平滑な紙に箔押しするよりも強いコントラストが生まれます。ブランドのアクセサリー台紙や名刺、貼箱、冊子の表紙など、少ない面積で世界観を伝えたい用途にぴったりです。
印刷面では、凹み部分のインキや箔のノリが悪く、かすれや抜けが発生しやすい点に注意が必要です。オフセットでは高めの印圧が推奨されており、デジタル印刷でも同様にベタの均一性は期待しにくいため、かすれを革の表情として生かすデザインで臨むのがおすすめです。
サガンGA|50色展開・微細エンボスの硬質な印象
砂岩(サガン)を思わせる微細なエンボスを施した、硬質でミニマルな印象のファインペーパーです。T-EOSシリーズの中では竹尾の主要銘柄に位置づけられており、50色のカラーとすべての連量が揃う数少ないフルラインナップ銘柄でもあります。ベーシックな色から高彩度の濃色まで選択肢が広く、「エンボス紙を使いたいが柄の主張は抑えたい」という案件の受け皿になります。
エンボスがごく細かいため、深彫りのエンボス紙に比べると印刷時のかすれが出にくく、文字情報の多い名刺やショップカード、パンフレットの表紙にも使いやすいのが実務上の利点です。微細な凹凸が光を拡散するため、落ち着いたマットな見え方になり、コーポレートツールから雑貨系まで幅広くなじみます。デジタル印刷でも比較的扱いやすい部類のエンボス紙です。
ミニッツGA|菱形の微細エンボスで現代的な印象
T-EOSシリーズの中で最も微細な、小さな菱形のエンボスを敷き詰めたファインペーパーです。遠目にはほとんど無地に見えるほどさりげない柄ですが、手に取ると想像以上の質感があり、清潔感のある現代的な表情をつくります。
「特殊紙らしさは欲しいが、柄物は避けたい」というビジネスシーンとの相性が良く、名刺、封筒、会社案内の表紙などコーポレート系のツールで選ばれます。エンボスが浅く細かいぶん印刷再現への影響も小さく、エンボス紙の入門としても薦めやすい銘柄です。
ギンガムGA|ギンガムチェック柄のエンボス紙
ギンガムチェックをイメージした、縞幅の等しい格子柄エンボスが特徴のファインペーパーです。規則的なチェック模様がはっきりエンボスされた紙は珍しく、無彩色の紙でも表面にリズムと可愛らしさが生まれます。カラーもポップな印象を生かすヴィヴィッドな明色がセレクトされており、雑貨のパッケージ、ショップカード、文具などカジュアルな用途に向いています。
ジャガードGA|織柄調のジオメトリックなエンボス紙
織物のジャガード織を思わせる、洗練されたジオメトリックな織柄エンボスを施したファインペーパーです。規則的でありながら有機的な陰影が生まれる柄行きで、テキスタイルのような上品さと現代的なグラフィック感を両立しています。
布地を思わせる質感はフォーマルな印刷物と好相性で、招待状、DM、カタログや作品集の表紙、ブランドツールなどに使われます。凹凸は中程度のため、広いベタよりも紙色を生かしたタイポグラフィ中心のデザインや、箔押しとの組み合わせで真価を発揮します。
マーメイド|波のような風合いの定番エンボス紙
1956年、デザイナー原弘氏の監修のもと誕生した、国産の機械抄きフェルトマーク紙を代表するファンシーペーパーです(製造:特種東海製紙)。製紙工程で織り模様のついた特殊なフェルトを押し当てることで生まれる穏やかな波のような風合いから、発売当初は「マーメイド・リップル」(人魚の住む海のさざ波)と呼ばれ、1960年代に現在の銘柄名で定着しました。半世紀以上にわたり、書籍装丁から画材まで幅広く愛され続けているロングセラーです。
現在のラインナップは1999年のグラフィックデザイナー田中一光氏監修による体系化を経て、2019年に「イノセント」「オーガニック」「ジャパネスク」「ポップ」「フォーマル」「クラシカル」という6つのカラーテーマ・全60色に整理されました。厚さは四六判110・153・240kgの3種で、カードからパッケージまで対応します。白系はフロスティホワイト、スノーホワイト、絹、白、ナチュラルの5色。全60色中49色は紙の劣化要因となる硫酸バンド・ミョウバンを使わないアシッドフリー仕様で、長期保存が求められる作品集や記念誌にも安心して使えます。なお四六判Y目240kgはFSC森林認証紙「マーメイド-FS」となっています。
非塗工のためカラー印刷はマットに沈み、凹凸によりベタや写真の再現には限界があります。紙の地肌を生かしたワンポイントのデザインや、水彩調のグラフィックとの組み合わせが定番の使い方です。書籍の装丁・見返し、名刺、ポストカード、パッケージのほか、水彩画用紙としての実績もあり、「絵になる紙」としての信頼は抜群です。
レザック66|革模様で親しまれるロングセラー
「レザック」はレザーライク(革のような)を意味する合成語で、特種東海製紙の登録商標です。その代表銘柄であるレザック66は1966年の発売(66は発売年に由来)で、カーフ=仔牛の皮しぼを模したエンボスとソフトな質感、美しい発色を持ち、日本のテクスチャーペーパーを代表する存在といわれます。卒業文集や記念誌、論文集、報告書の表紙として、誰もが一度は手にしたことのある紙です。
カラーはシリーズ最多の50色で、淡色からビビッド、ダーク系まで揃い、厚さは四六判100・130・175・215・260kgの5種類。表紙用途を軸に、名刺、御朱印帳、ファイルやホルダーなどにも広く使われます。シリーズにはキッド(仔山羊)の革を模したレザック75をはじめ、織物調まで多彩な姉妹品があり、「革の表情」のバリエーションから選べるのも魅力です。
凹凸は比較的浅めで紙腰がしっかりしているため、エンボス紙の中では加工・印刷とも扱いやすい部類です。とはいえベタの均一性は平滑紙に及ばないので、1〜2色の名入れやタイトル中心のデザインが映えます。冊子表紙のような定番用途は小部数化が進んでいる領域でもあり、デジタル印刷での少部数対応と相性の良い銘柄です。
い織り|自然素材を思わせる落ち着いた質感
庵(いおり)の壁のような、自然の素材を感じさせるエンボスを施したファインペーパーで、竹尾のT-EOSシリーズのひとつです。有機的な線が織り重なるテクスチャーと、和を意識して厳選されたカラーの組み合わせが「新しい和」のイメージをつくります。土壁や左官仕上げの壁を思わせる落ち着きがあり、和風でありながら古びない表情が持ち味です。
和菓子や日本茶のパッケージ、料飲店のお品書きやショップカード、和モダンな名刺・タグなどに好適です。連量は100kgがリーフレットやポスターに、170kgが名刺・カード・パッケージ台紙に向いたレンジです。エンボスの彫りは中程度のため、ベタよりも余白と紙色を生かした構成が生きます。
岩はだ|岩肌のテクスチャーを持つ鉱物質な風合い
渓流のせせらぐ水面下にある美しい岩をモチーフにした、鉱物質の色味を持つファンシーペーパーです(特種東海製紙の登録商標、1991年発売)。最大の個性は規則性のないランダムな深い凹凸で、表面にはほぼ平らな面がなく、全面にわたって岩肌のような模様が刻まれています。加工は表面のみですが、裏面にも模様がうっすら透け、若干の凹凸が生じるほどの深彫りです。
カラーは全18色。きぜと(黄瀬戸)、しの(志野)、びぜん(備前)、せいじ(青磁)など、陶磁器や鉱物を思わせる色名が並び、和の世界観と響き合うラインナップです。厚さは100・130・170kgの3種。和菓子のパッケージや掛紙、お品書き、名刺、招待状、タグ、ブックカバーなど、素材感で勝負する用途で選ばれています。
印刷には割り切りが必要な紙です。深い凹凸のためシワ状の白抜けがどうしても発生し、小さな文字や線、精細な写真の再現には向きません。紙の色と質感そのものをデザインの一部として扱い、箔押しや空押しを組み合わせるのが王道です。深いエンボスに箔を載せると輝きのコントラストが際立ち、贈答品パッケージの格を引き上げます。
和紙風の印刷用紙(和様)4銘柄
伝統的な和紙の風合いを、機械抄きの洋紙として再現したカテゴリーです。本物の手漉き和紙は美しい反面、量産性・印刷適性・コストに課題がありますが、和様の紙はオフセット印刷などでの利用を前提に設計されているため、和の演出と実用性を両立できます。会席のお品書き、挨拶状、目録、賞状、和菓子のパッケージ、記念誌など、格式や季節感を伝えたい印刷物で活躍します。もともと小部数でつくられることの多いジャンルなので、必要な分だけ刷れるデジタル印刷とは相性の良い用紙群です。
新局紙|越前和紙「局紙」を再現した用紙
「局紙」とは、明治期の大蔵省印刷局で抄かれていた高級紙のことで、越前和紙の流れをくみ、証券や賞状、上製本の見返しなどに使われてきました。手漉きに由来するわずかな紙厚のムラがあり、光にかざすと雲のような紋様が浮かぶのが特徴です。この局紙を機械抄きで再現したのが、特種東海製紙が1962年に発売した新局紙です。
手漉きを意識した漉きムラが再現されており、表面はさらっとしたラフ肌。カラーは白と古染(こそめ)の2色、厚さは四六判60〜150kgの5段階です。生成りがかった古染は、時代を経た和紙のような趣があります。
多色刷りの色再現は得意ではなく、少しかすれたような枯れた表現になるのがこの紙の味です。墨1色や特色1〜2色で組む賞状、目録、式辞、和風冊子の本文・見返しといった用途で本領を発揮します。格式が求められる少部数印刷物の多いジャンルだけに、デジタル印刷での1枚単位の対応と組み合わせやすい銘柄です。
新だん紙|檀紙の皺紋を再現した伝統的な風合い
「檀紙(だんし)」は、宮中の儀式にも用いられてきた日本古来の高級和紙で、表面全体に走る縮緬(ちりめん)状の細かなしわが特徴です。その味わいを機械抄きのファンシーペーパーとして再現したのが新だん紙で、ダイオーペーパープロダクツが製造しています。
紙全体にクレープのような細かい皺紋が入り、手触りは布に近いやわらかさ。張りが弱くしなやかなため、包む・掛けるという使い方に向いており、和菓子の包装紙や掛紙、ラッピングでの人気が高い銘柄です。料亭のお品書き、挨拶状、賞状ホルダーの内貼りなど「和」と「格」を演出したい場面でも定番です。カラーは伝統色を中心とした27色、厚さは5種類と、和紙系ファンシーとしては異例の多色展開で、雲母を効かせた「新だん紙きらら」という姉妹品もあります。
皺による凹凸があるため、精細な多色印刷よりも1〜2色の落ち着いた表現向きです。柔らかい紙だけに給紙・搬送は機械との相性が出やすく、印刷加工は事前テストが推奨されます。
新鳥の子|柔らかな風合いの和紙調用紙
「鳥の子紙」は雁皮(がんぴ)を主原料とする伝統的な和紙で、卵の殻のような淡い黄色――鳥の子色――がその名の由来です。滑らかで筆写しやすく、古来より高級和紙として、また襖紙としても親しまれてきました。この鳥の子の風合いを機械抄きで再現したファインペーパーが新鳥の子で、ダイオーペーパープロダクツが1975年に発売しました。
おもて面は平滑でふわっと温かみのある手触り、裏面は和紙らしいややラフな仕上げと、表裏で異なる表情を持つのが特徴です。カラーは雪と淡クリームの2色、厚さは四六判70・90・110・135kgの4段階。主張しすぎない和紙調なので、和風冊子や記念誌の本文、目録、お品書き、招待状の中紙など、文字をしっかり読ませたい和の印刷物に使いやすい銘柄です。
和様カテゴリーの中では表面が比較的平滑なぶん、印刷再現も安定しやすい部類です。淡クリームは墨文字との相性が良く、可読性と和の雰囲気を両立できます。
ぬのがみ|布の質感と和の風合いを併せ持つ用紙
クレープ紙にエンボスを掛けることで、和の風合いと布のようなやわらかな質感をもたせたファインペーパーです(ダイオーペーパープロダクツ製造)。銘柄名の通り「布」を思わせる手触りが最大の特徴で、細かなクレープの皺とエンボスの織り目が重なり、温かみのある優しい表情をつくります。
書籍の装丁やパッケージ、ステーショナリーなどに使われ、掛紙や包装など「手に触れる和の演出」で選ばれてきました。新だん紙より織物寄りの質感で、和洋どちらのデザインにもなじませやすい紙です。
透明・半透明の印刷用紙(トレーシングペーパー・PET)4銘柄
「透ける」ことを武器にできる用紙群です。素材は大きく2系統に分かれます。ひとつはパルプを原料としながら製法の工夫で透明性を持たせた紙系(トレーシングペーパーや薄物の包装紙)、もうひとつはPETに代表される樹脂系のシート・フィルムです。冊子の扉や見返し、カバー、封筒、パッケージの窓など、下にある要素を透かせて奥行きを演出したいときに選ばれます。
印刷には独特の配慮が必要です。紙系は吸湿による波打ちやカール、インキ乾燥の遅さに注意が要り、樹脂系はインキやトナーの定着性、熱への耐性が機材との相性を左右します。また透明素材には下地の白がないため、絵柄をはっきり見せたい場合は白インキを敷く「白引き」の設計が前提になります。透け感そのものをデザインに織り込む必要があるカテゴリーなので、対応実績のある印刷会社に早めに相談するのが成功の近道です。
A-PET|透明感に優れたPETシート
A-PETは特定の銘柄名ではなく素材名で、非晶質(Amorphous)のPET=ポリエチレンテレフタレートを指します。PET樹脂を急冷し、結晶化させないままシート化したもので、ガラスのような高い透明度と光沢、割れにくさを併せ持ちます。安定剤や可塑剤を含まないため安全性が高く、食品容器にも広く使われている素材です。
印刷・パッケージの分野では、クリアケース、ブリスターパック、透明パッケージ、POP、カードなど「中身や背景を見せる」用途の定番です。屈曲に強く、折り曲げても白化しにくいため、罫線を入れて組み立てる透明箱にも向いています。PETボトルと同系の樹脂でリサイクル性が高く、再生A-PETシートの採用も広がっています。
注意すべきは熱です。耐熱はおおむね60〜70℃で、それ以上では変形が始まるため、トナーを熱で定着させる方式のデジタル印刷とは相性の見極めが必要です。UVインクジェットやUVオフセットなど熱をかけない方式が基本線で、透明素材ゆえに白インキの下敷き(白引き)設計も欠かせません。
NTパイル|透過性と強度を持つポリエステル系透明紙
竹尾が扱うポリエステルベースの透明紙で、厚さによって変わらない透過性と強さを併せ持つのが最大の特徴です。トレーシングペーパーは厚くなるほど透明感が濁っていきますが、NTパイルはフィルム由来の素材のため、厚物でも澄んだ透け感を保てます。
物性もフィルムならではです。温度・湿度の変化で伸縮しないためカールや波打ちがなく、裂けにくく、折り曲げても白化しません。最厚の#230は約0.2mmとはがき程度の厚みで、薄いプラスチックカードのような反発感があります。カラーは乳白の「ホワイト」とパール調の「パールホワイト」を中心に展開されています(規格・色数は改廃があるため発注時に要確認)。
用途は透け感を生かした名刺・ショップカード、書籍の扉やカバー、案内状など。印刷は透けを前提に片面デザインが基本で、両面に刷る場合は重なりを計算したデータづくりが必要です。オフセットでは合成紙に準じたインキ・条件での対応となります。
キャピタルラップ|包装資材に多い片艶クラフト紙
日本製紙が製造する白色系の片艶晒クラフト紙です。漂白したパルプを使い、片面だけを平滑な艶あり仕上げにしたもので、表は印刷の映えるつるりとした艶面、裏は和紙のようなざらりとした風合いという表裏の二面性を持ちます。プレドライヤー付ヤンキーマシンで抄造された寸法安定性の高い厚物片艶クラフトで、紙力強度に優れ、蛍光染料無添加のため食品まわりの包装にも対応できます。
用途は手提げ袋、封筒、包装紙、各種加工用途など。白の清潔感とクラフト紙の素朴さを兼ね備え、薄めの連量ではほどよい透け感も生きるため、中身をほんのり見せる包装にも使われます。より薄手が必要な場合は純白ロールなど薄物の片艶クラフトと使い分けるのが一般的です。
クラシコトレーシング|厚さ展開が豊富なトレーシングペーパー
竹尾を代表するトレーシングペーパーで、現行品はFSC森林認証の「クラシコトレーシング-FS」です。トレーシングペーパーは、パルプを強く叩き(叩解)繊維の隙間をなくすことで透明性を得た正真正銘の「紙」であり、フィルムとは異なるマットで柔らかな透け感と、さらりとした手触りが魅力です。クラシコトレーシングは高い透明度と豊富な連量展開を持ち、高級トレーシングペーパーの定番として広く使われています。
展開の広さもこの銘柄の強みです。定番の白のほか、うす青・うす黄・桃などの淡色カラーがあり、柄入りの姉妹品として星空のような「星くずし」、雲を思わせる「風」も揃います。さらに厚物には、特殊製法で湿気に強くハーフカットによる折り加工まで可能な「クラシコトレーシングボード」があり、薄物のカバーから厚手のパッケージまで、トレーシングの世界だけで完結できるラインナップです。
用途は冊子の扉・見返し・カバー、封筒、招待状、ラッピングなど。淡い水彩調の印刷との相性の良さでも知られます。印刷面では吸湿による波打ちに注意が必要で、印刷直前の開封と速やかな印刷が推奨されるほか、インキの乾燥が遅いため合成紙用インキの使用が薦められています。小部数の扉・カバー差し替えなど、デジタル印刷と組み合わせやすい用途の多い紙ですが、機材との相性確認は必須です。
鏡面・光沢系の印刷用紙(パール紙・蒸着紙)7銘柄
紙そのものが放つ「輝き」で勝負するカテゴリーです。輝きのつくり方は大きく3系統あります。①パール顔料や雲母を塗工したパール紙(ペルーラ、キュリアス、きらびき)、②アルミ蒸着や金属フィルムの貼合・転写によるメタリック紙(アルブライト、スペシャリティーズ)、③塗工と鏡面仕上げで光沢を極めたキャストコート紙・スーパーアート紙(エスプリ、ハイマッキンレー)です。
共通する設計思想として、インキが乗った部分は下地の輝きが覆われるため、輝きは「白地(ヌキ)」で見せるのが原則です。ベタで刷るほど紙の個性は消えていきます。また通常のオフセットインキでは乾燥しにくい銘柄が多く、UV印刷が推奨されるものも少なくありません。デジタル印刷ではトナーやインクの定着可否が銘柄と方式によって大きく分かれるため、事前テストと通紙実績の確認がとりわけ重要なゾーンです。
アルブライト|パッケージ・POP向けの高輝度蒸着紙
平和紙業が販売する高輝度の転写蒸着紙で、前身銘柄「アルグラス」の生産終了に伴う後継品として発売されました。転写蒸着とは、フィルム上に蒸着させたアルミの金属層を紙に転写する加工方式で、鏡のような強い金属光沢を紙に与えます。フィルムを貼り合わせたまま残す貼合紙と異なり、紙側には金属層のみが残るタイプの加工です。
カラーは金・銀に加え、サンド、シティライト、レインボーの3種のホログラムがあり、ヘアラインやマット仕上げなどのバリエーションも揃います。付加価値の高いパッケージやPOPを筆頭に、DM、ポスター、ラベルなど「一瞬で目を引く」ことが求められる印刷物で選ばれています。
印刷には制約があります。金属面には一般的なインクジェット・レーザープリンタは不向きとされ、UVオフセット印刷が推奨されます。
キュリアス|金属調の輝きを放つ両面パール紙
海外で抄造される輸入ファインペーパー「キュリアスコレクション」のメタリックシリーズです。金属を思わせる輝きが特徴の両面パール紙で、紙自体にパール顔料が塗工されており、メタリックで深みのある色合いと指先に心地よい滑らかな質感を持ちます。見る角度によってわずかに色味が偏光する表情も、この紙ならではの魅力です。
銘柄の現況には注意が必要です。従来の「キュリアスメタル」「キュリアスIR」は生産・出荷を終了して現在庫のみとなり、2024年10月に後継の「キュリアスメタルN」としてリニューアル再発売されました(キュリアスIRホワイト→キュリアスN IRホワイトなどの対応関係)。カラーはホワイト、アイスシルバー、シャンパンやスーパーゴールドなどの金銀系に新色クールホワイトを加えた展開で、連量は88.1・144・220.3kgという海外抄造らしい独特の刻みです。FSC森林認証紙となっています。
用途は高級パッケージ、書籍の装幀、招待状・ブライダルアイテム、名刺、同人誌の表紙など。パール系ファンシーの中ではトナーの定着が良好とされ、オンデマンド(デジタル)印刷対応の評価もある銘柄で、小部数で金属調の華やかさを出したい案件の有力候補です。
スペシャリティーズ|パール調・メタル調のシリーズ
五條製紙が展開するパール調・メタリック調特殊紙のブランド総称で、「特殊紙の代名詞」とも呼ばれる存在です。表面加工の方式によってシリーズが分かれ、パール塗工(偏光パール含む)、アルミホイル貼合、アルミ蒸着PET・ホログラムフィルム貼合、アルミ蒸着転写加工など、紙とは思えない質感のバリエーションが揃います。鏡面のPET系、重厚な金属感のアルミ系、虹色に輝くホログラム系、上品なパール系と、輝きの方向性から選べるのが特徴です。
採用例の中心は化粧品・医薬品・健康食品のパッケージで、箔押しやエンボスと組み合わせた高付加価値の化粧箱で広く使われています。薄物の「グラフィックシリーズ」はポスター、書籍の表紙・帯、貼箱の化粧紙、紙袋、名刺などグラフィック用途に対応し、ラメ加工の特殊シリーズもあります。FSC認証やバガスパルプ配合の環境対応ラインも整備されています。
印刷は「印刷会社を選ぶ紙」です。通常のオフセットインキでは乾燥しない品種が多くUV印刷が主流で、印刷部はインキ皮膜でマットになるため、PP貼りなどの表面加工で光沢を戻す設計も定番です。品種ごとに表面素材が異なるため、デジタル印刷での可否も品番単位での確認が必要になります。
ペルーラ|「Perla」由来の両面パール調用紙
スペイン語で真珠を意味する「Perla」を語源とする、両面パール塗工の高級印刷用紙です(「ペルーラ」は特種東海製紙の登録商標)。両面に上品なパールトーンの輝きを持ち、さらさらとした滑らかな手触りと、粒状感のあるパールが光の角度で表情を変えるのが持ち味です。屋内では控えめに、屋外の太陽光の下ではひときわ強く輝くという二面性も知られています。
パール系ファンシーの中では印刷再現性が高い部類で、発色が良く、写真やイラストの印刷にも対応できます。パール加工は両面同仕様のため、両面印刷でも表裏差が出ません。カラーはスノーホワイト、ホワイトなどの白系が中心で、鉛筆やペンでの筆記も可能なため、宛名書きが必要な招待状にも使いやすい紙です。
用途はブライダルのペーパーアイテム、招待状・案内状、名刺、化粧品・美容系のDMやパッケージ、写真集・作品集の表紙など。印刷ではインキのセット・乾燥が一般紙より遅いため、両面印刷は片面を十分乾燥させてから行うのが基本です。家庭用インクジェットには不向きですが、レーザー系(トナー方式)では出力可とされており、デジタル印刷と比較的組み合わせやすいパール紙といえます。
きらびき|雲母引の技法による独特の輝き
「雲母引(きらびき)」とは、透明な鉱物である雲母(きら)を粉にして紙に引く、日本古来の料紙装飾の技法です。この伝統技法の風合いを、特種東海製紙のファンシーペーパー「タント」に表現したのが、きらびき(1991年発売)です。正式名の「きらびきT」のTは原紙のTANTを表しており、タントらしいさりげないエンボスの上に片面パール(雲母)加工が施されています。
ギラギラした輝きではなく、光の加減でふわりとパール調に浮かび上がる、和の奥ゆかしさを感じさせる輝き方がこの紙の個性です。裏面はタントのままなので、表裏の質感差も表現に使えます。カラーは白・うす桜・シルバーの3色、連量は70kgと100kgです。
用途は冊子や記念誌の表紙、招待状、和の演出を効かせたカード・掛紙など。印刷ではインキの乾燥が遅く(目安は中一日)、合成紙用インキの使用が推奨されます。過去の印刷物の色指定で増刷する場合は、現行3色を前提とした調整が必要です。
エスプリ|強い光沢のキャストコート紙
日本製紙のキャストコート紙シリーズで、2010年までの旧称「エスプリコート」の名で今も広く通る、キャストコートを代表する銘柄のひとつです。キャストコート紙とは、塗工した塗料が乾かないうちに、鏡面仕上げのキャストドラムへ押し当てて乾燥させた紙のこと。表面がドラムの鏡面を写し取るため、コート系では最高ランクの強い光沢と平滑性が得られます。
シリーズはベースとなる原紙の違いで分かれています。コート紙ベースで裏面もきれいに刷れる「C」、上質紙ベースで裏面の筆記性とコシの強さを持つ「FP」、アートポストベースの「AP」、アイボリー系でパッケージに向く「V」「VW」、カード紙ベースの「K」、そして唯一の両面キャストコート「W」など、用途に応じて選べます。ポストカード、シール・ラベル、パッケージ、カレンダー、書籍カバー、CDジャケットなど、艶やかな華やかさが欲しい印刷物の定番です。
設計のコツは「白を残す」ことです。印刷部はインキで光沢がやや落ちるため、白地を生かしたデザインほど鏡面の輝きが際立ちます。
ハイマッキンレー|高平滑・高グロスの高級印刷用紙
五條製紙の登録商標で、高い印刷適性と平滑性を兼ね備えたスーパーアート紙の代表銘柄です。スーパーアート紙とは、一般のアート紙よりもさらに塗工量を増やし、白紙光沢と印刷光沢をいっそう高めた最上位クラスの印刷用紙のこと。ハイマッキンレーアートFSはやや青みがかったホワイトの色調と高い光沢が特徴で、写真や色彩を鮮やかに、シャープに見せます。四六判110・135kgは「アート」、180kg以上の厚物は「ポスト」と呼び分けられています。
ラインナップはグロスのほか、インキグロスを高める改良が加えられたピュアダル・スーパーダル、マットアートなどのダル・マット系、高白色のピュアリストが揃います。用途は化粧品などの高級カタログ、ポスター、カレンダー、ポストカード、写真集、美術出版物といった「印刷の美しさそのもの」が価値になる領域です。
アート紙・コート紙(グロス・ダル・マット)5銘柄
上質紙などをベースに白い塗料(顔料)を塗り、平滑性と発色を高めたのが塗工紙です。塗工量が多い順にアート紙(A1、両面約40g/㎡)、コート紙(A2、同約20g/㎡)、軽量コート紙(A3)とグレードが分かれ、さらにA1の上には塗工量を増やしたスーパーアート紙(A0)があります。仕上げには、白紙面から光るグロス、白紙面はつや消しで印刷部だけ光るダル、全体につや消しのマットがあり、この「グレード×仕上げ」の掛け合わせで銘柄を選ぶのが基本です。
カタログやパンフレットなど商業印刷の主戦場だけに、各社の看板銘柄が揃うカテゴリーでもあります。銘柄ごとの違いは、白の色味(青み・赤み)、光沢、インキ乾燥性、階調再現に表れます。ここでは指名されることの多い5銘柄、スーパーアートのSA金藤、ダルアートのサテン金藤、A2グロスのOKトップコートとパールコート、A2マットのニューVマットを解説します。
SA金藤|キャストコート並みの光沢を持つアート紙
王子製紙が製造するグロス仕上げの最高級アート紙で、現行品は改良版の「SA金藤+」です。一般のアート紙(A1)よりさらに塗工量を増やしたスーパーアート紙(A0)に分類され、キャストコート紙に迫る白紙面の光沢と平滑性を持ちます。やや青みがかった(ブルーイッシュな)白さが特徴で、微妙な色調を鮮やかに再現し、豪華さやメタリックな質感を強調したい印刷物で真価を発揮します。白色度83%・白紙光沢度84%という数値は、一般印刷用紙としてはトップクラスです。
「+」への改良では独自技術によりインキ乾燥時間が従来の半分程度に短縮され、高級紙の弱点だった作業性も向上しました。用途は高級美術書や写真集、化粧品・ジュエリーのカタログ、ポスター、カレンダーなど。同じ金藤ファミリーには、A1グロスのOK金藤+、そして次に紹介するダル仕上げのサテン金藤があり、光らせ方の好みで選び分けられます。
サテン金藤|ダルアート紙の代表銘柄
王子製紙のダル仕上げA1アート紙(現行はサテン金藤N)で、「ダルアート紙のベストセラー」と紹介される定番中の定番です。ダルとは、白紙面の光沢を抑えてしっとりとしたマット調に仕上げつつ、インキが乗った部分には光沢が出るという仕上げのこと。紙面は落ち着いているのに絵柄は艶やかに浮かび上がるため、文字の可読性と写真の華やかさを1枚の紙で両立できます。
この特性から、宝石や自動車といった高級商材のカタログの定番用紙として長年支持されてきました。写真集や卒業・卒園アルバム、格調が求められる記念誌にも広く使われています。印刷検証でもインキの転移性・発色に優れ、色再現域はグロスのコート紙と遜色ないという結果が報告されており、「マットなのに色がしっかり出る」という評価は数値の裏付けがあるものです。
しっとりとした手触りそのものが高級感の演出になるため、手に取ってもらう前提の印刷物と好相性です。マット系より一段上の質感が欲しいとき、まず候補に挙がる銘柄といえます。
OKトップコート|作業性と再現性を両立した汎用コート紙
王子製紙のA2グロスコート紙で、現行品は「OKトップコート+」です。SA金藤+やOK金藤+で培ったインキ速乾技術をA2コートの分野に展開した銘柄で、印刷光沢の高さなど品質を維持したまま、平判印刷時のインキ乾燥時間を従来の約半分以下に短縮しています。「印刷作業性」と「印刷再現性」の両立が、この紙の存在意義です。
実務者による銘柄比較では、A2グロスコートの中で階調のなめらかさが最も優れるという評価もあり、汎用コート紙でありながら写真再現の質が高いのが強みです。カタログ、パンフレット、チラシ、ポスターまで、商業印刷の主力としてまず名前の挙がる1枚。凝った特殊紙を使わない案件でも、コート紙の銘柄をここまで指定できると仕上がりの安定感が変わります。
ニューVマット|マットコート紙の代表銘柄
三菱製紙のA2マットコート紙で、「A2マットコートの代名詞」と呼ばれる代表銘柄です。落ち着いた風合いと優れた印刷適性を持ち、マットコートの弱点になりがちなインキ乾燥性に優れ、擦れ汚れも少ないため、印刷現場からの信頼が厚い紙です。腰があり平滑度も高く、ボリューム感のあるつくりで十分な束(つか)が得られるのも、冊子用途でうれしいポイントです。
マット系銘柄の中でも印刷面の光沢が最も低い部類とされ、「マットらしいマット」の落ち着いた仕上がりになります。会社案内や大学案内、カタログ、DM、書籍など、上品さと読みやすさを求める印刷物の定番です。ECFパルプを使用し、平判はFSC森林認証紙へ完全移行済み。高白色のホワイトニューVマット、厚物のニューVマットNAという派生があり、本文と表紙で質感をそろえた冊子設計ができます。
パールコート|冴えた白さでグロス感が際立つコート紙
三菱製紙のA2グロスコート紙の代表銘柄で、現行ラインは「パールコートN」(厚物はパールコートNA)、系列に「Sパールコート」があります。高いインキグロスとトップレベルのインキ乾燥性を持ち、冴えた白さと滑らかな印刷面感が高級感のある仕上がりをもたらします。作業性が良く使いやすいと評されるのも、長く定番であり続ける理由です。
同じA2グロスでも、OKトップコート+と並ぶ「もう一方の定番」として比較されることが多く、白の見え方や印刷面の艶の出方の好みで選ばれます。冊子では本文にパールコートN、表紙に厚物のパールコートNAを使うと、色味と風合いに統一感のある1冊に仕上がります。用途はカタログ、パンフレット、雑誌、チラシなど商業印刷全般です。
上質紙 4銘柄
上質紙とは、化学パルプを100%使用した非塗工の印刷用紙のことです。「上質」という言葉は品質の高さではなく原料の分類を表しており、化学パルプ70%以上は中質紙、それ以下は更紙系と区分されます。塗工がないため発色は落ち着き、鉛筆やペンでの筆記性に優れ、めくりやすいのが持ち味で、書籍の本文、テキスト、報告書、封筒など「読む・書く」印刷物の土台であり続けています。
見落とされがちですが、上質紙は「どの銘柄も同じ」ではありません。銘柄によって白の色味や表面の平滑性が異なり、同じ冊子の中で銘柄を混ぜると、断裁後の小口を見ただけで紙が変わったことが分かってしまいます。増刷や追加ページでは銘柄をそろえるのが鉄則です。なお非塗工でトナーの定着が安定しやすいため、デジタル印刷とは全般に相性の良いジャンルです。
OKプリンス上質|上質紙の代表銘柄
王子製紙の上質紙で、メーカー自身が「上質紙の代名詞」と掲げる代表銘柄です。高白色・高不透明で保存性に優れ、多色印刷にも対応できる安定した品質が身上。白色度は84.5%と上質紙の中でも高く、モノクロの本文からカラーの図版入りページまで幅広くこなします。
書籍・テキストの本文、報告書、伝票、封筒など用途はまさに全方位で、FSC森林認証版のOKプリンス上質EF、古紙配合の再生版OKプリンス上質エコグリーンといった環境対応の選択肢が揃っているのも、企業案件で使いやすい点です。迷ったときの基準銘柄として覚えておいて損のない紙です。
npi上質|白色度と不透明度のバランスに優れる
日本製紙の上質紙代表銘柄です。汎用性が求められる上質紙の中でも白色度と不透明度をバランスよく高めており、優れた印刷適性と、中性紙ならではの保存性を備えています。裏面の文字が透けにくいため、両面印刷の書籍本文でも読みやすさを保てます。
派生銘柄が充実しているのも特徴で、嵩高技術を注いだ「npi上質バルキー」はページ数の多い冊子の軽量化に有効、蛍光染料を使わない姉妹銘柄「しらおい」は光源による色の見え方の変化が少なく、食品に触れる用途にも対応します。出版・商業印刷の現場で、OKプリンス上質と並び最初に候補へ挙がる上質紙です。
金菱|平滑性に優れ多様な印刷様式に対応
三菱製紙の代表的な上質紙です。社章の菱形に由来する伝統あるブランド名で、優れた平滑性を持ち、オフセット印刷からビジネスフォームまでさまざまな印刷様式に適応する懐の深さが持ち味です。表面が整っているぶん文字のエッジがきれいに出るため、テキスト主体の書籍・資料で安定した品質を発揮します。
雷鳥上質|自然な色合いの素朴な紙質
中越パルプ工業の上質紙で、同社の伝統ブランド「雷鳥」の名を冠する銘柄です。白色度は85.5%と数値上は上質紙のトップクラスにありながら、風合いは自然で素朴、目に優しい落ち着いた紙面が持ち味です。数値の白さと体感のやわらかさを両立しているのが面白いところで、長時間読む書籍本文に向いています。
中越パルプ工業は国産竹100%の「竹紙」など個性ある紙づくりでも知られるメーカーで、雷鳥ブランドにはコート紙・ダルアートなどの塗工紙群もあります。書籍・文集・記念誌の本文用紙として、大手2社の定番銘柄とはひと味違う選択肢になります。
厚紙・カード紙(アートポスト含む)6銘柄
厚みと剛度のある紙の総称が板紙で、その中でも印刷用に表面を塗工した高級白板紙がこのカテゴリーの主役です。大きく分けると、厚手の上質紙にアート紙相当の塗工を施した「アートポスト」と、両面を白く塗工した「両面コートカード」があり、いずれも板紙の中で最も広い色再現域を持ちます。仕上げはグロス系とマット系に分かれます。
用途はパッケージ、POP、ポストカード、名刺・ショップカード、冊子の表紙、ポケットフォルダなど。名刺やカード類のオンデマンド印刷ではこのカテゴリーが主戦場で、印刷会社のPOD常備紙リストにも多くの銘柄が並びます。小ロットのデジタル印刷と最も距離の近い用紙群といえます。
F1カード|モダンな白さと繊細な色再現
日本製紙の高級白板紙(両面コートカード)です。清潔感のあるモダンな白さが特徴で、印刷をワントーン明るくきれいに映えさせ、繊細な色彩のニュアンスまで引き上げると評される、色再現重視のカード紙です。一般的なアートポストと比べてもやや白色度が高く、その差は並べると一目で分かります。
表面はコート紙同様に塗工されているため光沢と発色に優れ、写真やイラストを使ったフルカラー印刷に好適です。製函適性にも優れているため、高級パッケージの本体用紙としても使われるほか、POP、カード、ポケットフォルダなど「厚みと見栄え」の両方が要る印刷物で活躍します。姉妹品に、白さと光沢をさらに高めたスーパーF-1ホワイトがあります。
OKエルカード|青みのある白さで印刷再現性に優れる
王子製紙の高級白板紙で、現行品は「OKエルカード+」です。ひと言でいえば白色度の高いカード紙で、やや青みのある冴えた白さと高い表面性により、印刷再現性に優れています。表面には程よい光沢があり、フルカラー4色印刷との相性が良い紙です。
用途は雑誌の表紙、高級書籍、カラー絵本の本文、商業宣伝物、パッケージ、そしてカード類やポケットフォルダなど。板紙としての連量展開が広く、薄手のカードから厚手のパッケージまで1銘柄でカバーできます。印刷会社のPODカラー常備紙にも採用例が多く、名刺・カードのデジタル印刷では定番の1枚です。
OKマットカード|マット調の落ち着いたカード紙
王子グループ(王子マテリア)の高級白板紙で、あざやかな白さとソフトな肌合いを持つ、優雅な印象の厚もの塗工紙です。落ち着いた雰囲気の艶消しカードとして、グロス系カード紙と対をなすマット系の定番に位置づけられます。
しっとりとした手触りは招待状や名刺、ショップカード、上質なパッケージと好相性で、光らせるより「品よく見せる」方向の設計に向いています。なおマット系の厚紙全般にいえることですが、トナー方式のデジタル印刷ではインキ(トナー)部分に光沢が出て質感の差が生まれやすいため、余白を生かしたデザインのほうが紙の魅力を引き出せます。
OK特アートポスト|美しい光沢のアートポスト紙
王子製紙のアートポスト(現行はOK特アートポスト+)で、このジャンルの代表格です。アートポストとは、厚手の上質紙にアート紙相当の塗工を施した板紙のことで、板紙の中では最も広い色再現域を持ちます。美しい光沢と滑らかな表面により、印刷面が際立って美しく仕上がるのが身上です。
ポストカード、名刺・ショップカード、冊子の表紙、POP、パッケージと用途は幅広く、「厚くて、白くて、写真がきれいに出る紙」の基準として、印刷通販やオンデマンド印刷でも最も目にする銘柄のひとつです。特殊紙を使わない案件の表紙・カード用紙として、まず間違いのない選択肢といえます。
アイベストW|ピュアな白さの定番カード紙
日本製紙の高級白板紙で、鮮やかでピュアな白さと落ち着いた風合いを持つマット調の両面コートカードです。ギラつかない白の美しさが持ち味で、雑誌の表紙、高級書籍、絵本の本文、ポストカード、商業印刷物まで幅広く採用されています。
オンデマンド印刷機の常備紙として採用される例も多く、名刺・カード・冊子表紙の小ロット印刷では長年の定番です。トナーの定着が安定しやすいマットカードとして、デジタル印刷と特に距離の近い銘柄といえます。
スーパーF1ホワイト|超高白色×高光沢のカード紙
日本製紙の高級白板紙で、それまでの白板紙にはなかった「超高白色×高光沢」を実現した両面コートカードです(正式表記はスーパーF-1ホワイト)。洗練された白のさわやかさと抜群のグロス感で、印刷物を強力にアピールできる、このカテゴリーの尖った存在です。
用途は出版物の表紙、POP、高級パッケージ、そしてトレーディングカード。近年需要が拡大しているトレカ・カードゲーム分野で名前が挙がる紙で、発色のコントラストと厚みの存在感が求められる用途にはまります。なお蛍光増白剤を使用しているため、食品に直接触れる用途には向きません。連量展開も拡充されており、カードから箱物まで対応できます。
用途別の印刷用紙の選び方
同じ「良い紙」でも、用途が変われば正解は変わります。ここでは、ご相談の多い4つの用途について、本ページで紹介した銘柄を候補に挙げながら、選び方の軸を解説します。
書籍・文芸書の本文に適した用紙
本文用紙選びの軸は、長時間読んでも目が疲れないこと、めくりやすいこと、そして厚みと重さのバランスです。真っ白な紙は文字とのコントラストが強すぎるため、b7ナチュラルやクリーム系のように少し色味を落とした紙が好まれます。ページ数の多い本を軽く仕上げたいなら、b7トラネクストやb7バルキーのような嵩高紙が定番です。しなやかな紙腰でめくりやすく、不透明度が高いため裏面の文字も透けにくいのが強みです。
標準的な選択ならOKプリンス上質やnpi上質などの上質紙、素朴で優しい風合いなら雷鳥上質、時代感や質感を「味」にしたいZineやコミックならOKアドニスラフ、写真やイラストが混ざる上質な文芸書ならミセスB-Fと、本の性格に合わせて幅が持てます。小部数の自費出版や記念出版は、デジタル印刷と嵩高紙の組み合わせで「薄い本でも書籍らしい佇まい」がつくれます。
写真集・図録に適した用紙
写真をどう見せたいかで、紙は3つの方向に分かれます。ツヤと迫力で見せるならSA金藤+やハイマッキンレーのようなスーパーアート紙。紙面は落ち着かせて絵柄だけ艶やかに浮かび上がらせるなら、サテン金藤NやMTA+-FSのようなダル系。そして紙の風合いごと作品の一部にするなら、ヴァンヌーボやエアラス、ミセスB-Fといったラフグロス系です。
特にエアラスは軽さと厚みを両立できるため、ページ数の多い図録を重くしたくない場合に効きます。デジタル印刷で風合いを再現したい場合は、HP Indigo向けに設計されたヴァンヌーボDigitalシリーズのような選択肢もあります。写真集づくりの進め方や造本の詳細は、写真集印刷のご案内ページもあわせてご覧ください。
カバー・表紙・帯に適した用紙
表紙まわりは「手に取った瞬間の第一印象」を決める場所です。選び方の軸は、手触り、加工適性(箔押し・PP・エンボスなど)、そして強度の3つ。ラフグロス系のヴァンヌーボやMr.Bは、風合いと絵柄の再現を両立できる表紙の王道です。画用紙のようなアラベール、波の風合いのマーメイドは、タイトルと余白で見せる装丁に向きます。
文集・記念誌の表紙ならレザック66、個性で勝負するならクロコGAや岩はだのようなエンボス紙、艶やかに光らせたいならエスプリやOK特アートポスト+。カバーの上にクラシコトレーシングを重ねて奥行きを出す手法も定番です。表紙は加工と組み合わせてこそ生きる領域なので、箔押しや空押しの相性まで含めて銘柄を選ぶと失敗がありません。
カード・DM・パッケージに適した用紙
カード類は厚みの存在感と発色、そして「らしさ」の演出で選びます。定番はOK特アートポスト+、F1カード、OKエルカード+、アイベストWといった高級白板紙で、フルカラーの再現性と剛度のバランスに優れます。トレーディングカードのような高発色・高光沢を狙うならスーパーF-1ホワイトが尖った選択肢です。
華やかさを足したいDMや招待状にはペルーラやキュリアスメタルNのパール紙、強いインパクトが必要なパッケージやPOPにはスペシャリティーズやアルブライトのメタリック系、触感で記憶に残したいならクロコGAやマーメイド、中身を見せる透明パッケージならA-PETと、目的別に主役級の選択肢が揃っています。小ロットのカード・DMはデジタル印刷の得意分野なので、複数の紙で刷り比べてから本番に進むのもおすすめです。
特殊紙・ファンシーペーパーはデジタル印刷できる?NDPの対応範囲
結論からいえば、多くの特殊紙・ファンシーペーパーはデジタル印刷で扱えます。ただし「銘柄×印刷方式」の相性は一様ではありません。本ページでも触れてきたとおり、深いエンボス紙は凹部のかすれ、パール紙や蒸着紙はトナーの定着性、PET系シートは熱への耐性、ラフグロス系はグロス感の出方と、方式ごとに見極めのポイントがあります。ヴァンヌーボDigitalのようにデジタル印刷専用に設計された銘柄が登場している一方で、UV印刷が前提となる紙もあり、「使いたい紙が決まったら、まず対応可否を確認する」のが特殊紙×デジタルの鉄則です。
NISSHAのデジタル印刷サービス「NDP」は、これまでに500種類以上の用紙への通紙実績があります。書籍・写真集・図録など、紙の風合いが仕上がりを左右する印刷物を小部数からお受けしてきた経験から、銘柄ごとの相性の見極め、データの作り方、加工との組み合わせまで含めてご提案できるのが強みです。本ページで紹介した銘柄はもちろん、掲載外の銘柄のご指定や、用紙のお持ち込みについてもご相談ください。特殊紙は「使ってみたいけれど、オフセット印刷のロットでは試せない」という声の多い領域です。デジタル印刷なら1冊・1枚単位から形にできるため、紙選びの検証コストを大きく下げられます。まずは候補の銘柄で刷り見本をつくるところから、お気軽にご相談ください。
印刷用紙に関するよくある質問
Q1.連量・坪量とは何ですか?「四六判135kg」はどのくらいの厚さですか?
坪量は紙1㎡あたりの重さ(g/㎡)、連量は決まったサイズの原紙1,000枚分の重さ(kg)です。四六判は788×1091mmの原紙サイズを指し、「四六判135kg」なら、そのサイズの紙1,000枚で135kgという意味になります。同じ135kgでも菊判やA判では1枚の面積が異なるため厚さは別物ですし、同じ連量でも嵩高紙とコート紙では紙厚が大きく違います。厚みを正確に比べたいときは、連量ではなく紙厚(mm・μm)で確認するのが確実です。
Q2.同じ銘柄でも、印刷方式によって仕上がりは変わりますか?
変わります。オフセット印刷はインキが紙にわずかに浸透しながら定着する方式で、ラフグロス系の「印刷部だけが光る」表情はこの仕組みから生まれます。一方、トナー方式のデジタル印刷はトナーが紙の表面に載って定着するため、マット系の紙でも印刷部分にツヤが出るなど、同じ紙でも見え方が変わります。UVインクジェットではインキがわずかに盛り上がった質感になります。紙見本の色や手触りだけでなく、実際に使う方式で刷った「刷り見本」で確認するのが、失敗しないいちばんのコツです。
Q3.このページに載っていない銘柄や、手持ちの紙への印刷はできますか?
対応できる場合があります。NDPでは通紙実績のない用紙についても、事前のテストで印刷可否を確認したうえでご提案しています。用紙のお持ち込み(支給紙)についても、条件を含めてご相談ください。
Q4.使いたい紙が廃番・規格変更になっていました。代わりの紙は相談できますか?
ご相談いただけます。ファンシーペーパーは近年、銘柄の統廃合や色数の整理が続いており、本ページで紹介した銘柄にも後継品への切り替えが進んでいるものがあります(例:ジェントル→ジェントルS)。風合い・厚み・価格帯の近い現行銘柄を候補としてご提案しますので、過去につくった印刷物の増刷時などにもお声がけください。
Q5.紙見本やサンプルは入手できますか?
各製紙メーカーや紙の専門商社が銘柄ごとの見本帳を用意しています。NDPでも、印刷のご相談にあわせて用紙のご提案や確認方法をご案内しています。
まとめ|紙選びから、デジタル印刷のNDPがお手伝いします
印刷用紙は、同じデザイン・同じデータでも、紙が変われば仕上がりは別物になります。本ページでは52銘柄を8つのカテゴリーで紹介してきましたが、最適な1枚は「何を、誰に、どう手渡すか」で決まります。候補が絞れた方も、まだ迷っている方も、小部数から試せるデジタル印刷なら紙選びのハードルはぐっと下がります。書籍・写真集・図録をはじめ、紙の風合いにこだわる印刷物のご相談は、NISSHAのデジタル印刷サービス「NDP」までお気軽にお寄せください。