車載ディスプレイの大型化に伴い、ディスプレイの最表部に位置するカバーパネルにも大型化の波が押し寄せています。車載ディスプレイのカバーパネルの基材にはガラスと樹脂の2つがありますが、多くの場合、ガラスが採用されてきました。その理由の一つは、樹脂とガラスとでは質感に差があるためだといわれ、その傾向は特に内装品にもより高い上質感が求められる高級車で強く見受けられます。
NISSHAでは独自の印刷・成形技術を活用した自動車関連製品の開発・製造を多数手掛けており、車載ディスプレイの最表面に位置する樹脂カバーパネル「SmartFacia」も提供しています。「SmartFacia」の製造には「IMD(In-mold Decoration)※・IML(In-mold Labeling) ※」と呼ばれる成形同時加飾の手法を採用しています。このIMD・IMLでは、射出成形時に金型内に絵柄や機能を付加したフィルムを挟んで成形することで、3D形状の樹脂表面に機能やデザインを付加することができます。樹脂のほかにもガラスや金属などの成形品にも表面加飾ができるため、自動車内装、モバイル機器、家電製品など幅広い分野で、IMD・IMLの技術は採用されています。
※IMDおよびIMLは、NISSHA株式会社の登録商標です。
IMD・IMLの技術の詳しい内容はこちらをご参照ください。
車載ディスプレイのカバーパネルの基材にはガラスと樹脂の2つがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれに特長はありますが、ここでは「見え方」と「加工の自由度」という観点で考えてみます。
まず「見え方」の面では、ガラスパネルはガラスの裏面に印刷(意匠)加工を施します。表面から見た場合には意匠は透明なガラスの奥にあることから、必然的に絵柄には奥行き感が生まれます。一方、射出成形による樹脂パネルでは一般的に表面に印刷(意匠)加工を施しているため、絵柄は表面つまり眼前にあります。このように、ガラスと樹脂では意匠の位置が異なることから、見え方が大きく異なってくるというわけです。そこにガラス特有の高い透明性とつるつるとした滑らかな指触りといった要素が加わることで、さらに高級感、上品な質感などが実現されるようになります。
次に「加工の自由度」の面では、それぞれの基材の性質のとおり、ガラスパネルに比べて、樹脂パネルの方が圧倒的に加工の自由度は高くなります。細くしたり捻ったりといった複雑な形状や、コックピットの形状に合わせたシームレスなデザインにしてほしいという要望にも、樹脂パネルであれば十分に対応することができるでしょう。また安全面では、交通事故などでダッシュボードが破損した際に、樹脂パネルの方が周囲に破片が飛び散りづらいということもあります。
現在、NISSHAでは、これまで培ってきたIMD・IMLやインサート成形技術、印刷技術を生かして、より大型・シームレス・3D形状を可能にする次世代「SmartFacia」を開発しています。
次世代SmartFaciaの特長は、樹脂ならではの特性を生かした大型化や曲面などの異形状にも対応できる高いデザイン自由度と、樹脂パネルでありながらガラスのような奥行き感と質感を表現できる機能、その両方の利点を併せ持っていることにあります。
SmartFaciaの製品開発においては、製造工程を刷新し、従来の転写からオーバーモールド工法に変更しました。また樹脂パネルへの意匠を表面加飾から裏面加飾に変更したことで、樹脂でありながらガラスのような高い透明性と奥行き感を生み出すことが可能になり、寸法精度も向上しました。さらに枠(額縁)の黒色とディスプレイの黒色がシームレスになるように樹脂パネルの表面に光学処理(AG/AR)と防指紋処理を施したことで使いやすさも追求しています。
今回は、車載ディスプレイの大型化・高度化という近年の潮流と、それに応えるNISSHAの製品・技術としてCOPタッチセンサーと次世代大型オーバーレイパネルSmartFaciaについてご紹介してきました。
すでにSmartFaciaのプロトタイプは完成しており、量産化に向けた準備に入っています。SmartFaciaは自動車向けの製品ではありますが、これに関する技術は家電や携帯電話、医療系の樹脂成形品など、他分野への展開の可能性も秘めています。将来的には、COP-DITOタッチパネルとSmartFaciaとを組み合わせることで、パーツ単体だけでなく機能も合わせてご提供することも可能です。
※SmartFaciaは、NISSHA株式会社の登録商標です。
100年に一度と言われる大変革期を迎えた自動車業界において、CASEに対応した新たなニーズやお客様のご要望に、NISSHA独自の技術・開発力でお応えし、モビリティ産業の進展に貢献してまいります。
NISSHAの自動車市場向けの製品・サービスの詳細はこちらをご参照ください。
フィルムディバイス開発や量産におけるご相談はお気軽にご連絡ください
CLICK