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フィルムヒーターは、プラスチックフィルム基材の上に電熱線を形成して作られる、「薄い」「柔軟」といった特徴を持つ加熱用デバイスです。
PET、COP、PENなどの樹脂素材を基材として、導電膜や電熱線パターンを形成して作られるものや、金属製の電熱線をフレキシブルな絶縁材で挟み込んで作られるものなど各種あります。
柔軟性があるので素材の形状に合わせて表面に貼り付けることが可能であり、薄い基材を使用しているので大きな実装スペースを必要としません。
また透明なフィルムヒーターならばガラス窓やミラー表面に貼り付けても視認性が悪くなる問題がありません。
フィルムヒーターの厚みは0.1mm程度の極薄のものから2mmくらいの厚さのものまで、基材や加熱部の素材などにより様々な厚みのものがあります。
加熱できる温度も数十度までに対応するものから100度以上まで加熱可能なものまで各種あります。
ヒーターの熱量(P)は、定電圧(V)の電源下では抵抗(R)に反比例します(P=V2/R)。そのため、ヒーターに用いる導電材はできるだけ低抵抗である方が、加熱能力が高くなります。
最近では車載部品にヒーターを実装するニーズが高まっています。たとえば、タンクやパイプでは内容物の凍結防止や加熱、またパイプ表面の結露防止などの用途にフィルムヒーターが用いられます。
さらにフロントガラスやヘッドライトでは冬場の着雪、着氷を除去したいといったニーズが有ります。このようにフィルムヒーターは自動車のタンクやパイプといった曲面形状の部品や、フロントガラスやヘッドライトなどの光透過性が必要な部品への実装に適しています。
各種フィルムヒーターの特長を挙げていきます。
ニクロム線や銅線などの金属の電熱線を樹脂フィルムで両側から挟み込むか、または樹脂フィルムに貼り合わせた銅などの金属箔をパターニングして作られるヒーターです。樹脂フィルムにはPETやポリイミドなどが使われます。
低抵抗なので比較的早く昇温しますが、ヒーターの線幅が太くなるので配線は目視で見えやすくなります。
ITOによる透明導電膜を発熱源として使用するフィルムヒーターです。全光線透過率90%以上の高い透明性を有しているので視認性に優れています。ただし、ITO特有のわずかな黒味を帯びた透明膜になります。
ITOは抵抗が高い材料なので昇温速度は速くありません。また、硬く脆い性質のため折り曲げや成形により透明導電膜にクラックが入り割れてしまうことから、曲面対応は緩やかな形状に限定されます。
カーボンナノチューブを分散したコーティング剤の塗布膜を発熱源とするフィルムヒーターです。
非常に薄く、軽量で、高い柔軟性や耐久性を持たせることが可能です。金属に近い導電性を持つので早く昇温します。
ただし透明性を持たせることは難しく、視認性が必要な場所に用いることは困難です。
Au、Ag、Al、Cuなどの金属を用いて、線幅が数μm程度の視認できないメッシュパターンを樹脂フィルム基材へ形成して作られるフィルムヒーターです。
メッシュパターンを工夫することで、高い透明性を付与したり、曲げても断線することのない柔軟性と成形性を持たせることができます。
低抵抗で比較的早く昇温します。
薄く、軽く、曲げられるフィルムヒーターは、幅広い分野、用途で使用されています。
工業分野ではタンクや配管で内容物を加熱する場合や、タンク表面への結露防止、凍結防止といった用途でフィルムヒーターが用いられています。また、薄くて柔軟な特徴を活かして、設置スペースが限られる狭い場所での結露防止といった用途にも使用されています。
車載用途でのニーズも増えています。近年、車のヘッドライトはLED化が進んだ関係で発熱量が減り、着雪しやすくなったため、フィルムヒーターにより着雪防止をするようになりました。
また寒冷地では、フロントガラスへの着霜による視界悪化や、LiDARやカメラといった車載センサー類の表面が雪で覆われることにより機能しなくなるといった、雪霜が原因のさまざまな問題が発生します。このような問題を解決する手段として、透明性のあるフィルムヒーターが用いられています。
他にも、医療機器や測定装置の分野で、低温庫内を観察する窓部のように曇りや結露を嫌う部品や、発酵や動物の飼育のために床部の保温が必要な装置などで、フィルムヒーターは活用されています。
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