ロボットアームに役立つ6軸力覚センサー
特徴や3軸との比較を解説

製造業界では、人手不足や生産効率向上の観点から、今まで人間が担っていた手作業をロボットアームに代替させるケースが増えています。その中で重要な役割を占めているのが、ロボットアームに感覚を与える力覚センサーです。

力覚センサーには、3軸タイプと6軸タイプの2種が存在します。

3軸:XYZ三方向の力((Fx,Fy,Fz) もしくは Z方向の力とX,Y方向のモーメント(Fz,Mx,My) を測定

6軸:XYZ三方向の力とモーメント全て(Fx,Mx,Fy,My,Fz,Mz)を測定

ロボットアームに感覚を与える力覚センサー

6軸力覚センサーの採用により、ロボットアームが行える作業は大幅に増えており、生産性の向上に大きく寄与しています。またこれらのロボットアームは、製造業だけでなく、農業における収穫作業など他の分野での採用が拡大することも期待されています。

この記事では、3軸力覚センサーと6軸力覚センサーの違いや6軸力覚センサーのメリットについて解説します。

3軸、6軸力覚センサーが計測できる状態量

3軸力覚センサーと6軸力覚センサーの違いは、計測できる状態量の数です。

3軸力覚センサーとして使われるものは主に2種類で、X,Y,Z方向における力(Fx,Fy,Fz)を測定するものと、Z方向の力と、X,Y方向のモーメント(Fz,Mx,My)を測定できるものがあります。目的に応じて使い分けられており、ロボットアームには、(Fz,Mx,My)を測定できる3軸力覚センサーが多く採用されています。

一方で、6軸力覚センサーはX,Y,Z方向の力とモーメントすべて(Fx,Mx,Fy,My,Fz,Mz)を測定することが可能です。複数の状態量に基づいて制御するため精度は上がる一方で、それぞれの状態量を誤計測しないような高い検出精度を実現するための工夫が必要となります。

3軸、6軸力覚センサーが計測できる状態量

6軸力覚センサーが採用されるロボットの種類

3軸力覚センサーと6軸力覚センサーは、前述の通り計測できる状態量に違いがあります。
そのためロボットアームへの採用を検討する場合には、ロボットアームにどのような作業を行わせる必要があるかを考慮した上で、適した軸数を選ぶ必要があります。

3軸力覚センサーは、比較的単純な動作制御向けのロボットアームに用途が限定されます。6軸力覚センサーに比べると制御しなければいけないパラメーターが少なく、センサー単体や構成もシンプルにまとめ、コストを抑えたい場合には有力な選択肢です。

6軸力覚センサーは、3軸力覚センサーよりも精密な動作制御が必要なロボットアームへの採用が進んでいます。価格は3軸力覚センサーよりも高価ですが、それを上回る大きなメリットがあります。

6軸力覚センサーが採用されるロボットの種類

3軸力覚センサーで対応できる作業は、基本的に6軸力覚センサーでも実現できるため、将来の拡張性を考慮し、最初から6軸力覚センサーを採用しておくという考え方もあるでしょう。

関連資料

3軸力覚の面内分布測定

摩擦・せん断力センサーの
製品カタログ/用途別事例集

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6軸力覚センサーをロボットアームに採用するメリット

ロボットアームへの採用が加速している6軸力覚センサーについて、メリットを紹介します。

ティーチングが容易になる

ティーチングとは、製造工程の中でどのように動くかをロボットにあらかじめ記録する作業です。6軸力覚センサーを使用すると、このティーチングを簡便に行えるようになります。

ティーチングにおいて複雑な動作を正確に設定するためにはロボットの挙動ひとつひとつを精緻に考えていく必要があり、大変な時間と労力を要する作業になります。特にアームが製品を把持する際の力の制御は、アームの稼働量だけで制御するのは困難です。

ですがロボットアームに6軸力覚センサーを組み込めば、その作業の労力を軽減することができます。力覚センサーはアームが製品を掴む把持力や滑りをデータとしてアウトプットします。そのデータに基づき把持力を調整するプログラムを導入することで、ティーチングにおける細かい動作の設定は簡略化することができるはずです。
はめ合わせやネジ締め、平面合わせ、曲面ならい、バリ取りなど、3軸力覚センサーでは対応できない作業にも対応可能です。

ばらつきのあるワークに対応

ロボットアームで取り扱うワークは、常に同じ寸法かつ剛性の高いものばかりではありません。ティーチングによって一定の条件での動作を設定してしまうと、寸法にばらつきがあるものや形状が異なるものには柔軟には対応できないため、ロボットアームを活用できないといった課題がありました。

しかし、6軸力覚センサーを用いればワークをつかむ際の反力などを精密に測定することができます。この測定値を活用することで、ばらつきや異形状のワークにも臨機応変に対応が可能です。これによりつかむと潰れてしまうような食品などにもロボットアームが採用できるようになりました。

省人化と作業の均質化を実現

6軸力覚センサーを搭載したロボットアームは、より人間に近い作業を実現します。従来は作業者が必要だった製造工程をロボットアームに任せられるため、省人化につながります。

また、6軸力覚センサーは作業の均質化にも寄与します。複数の作業者が同じ作業をする工程では、作業者ごとの作業品質にばらつきが出る恐れがあります。こうした作業を6軸力覚センサー搭載のロボットアームに任せることで、ばらつきを極力排除し、品質を一定に保つことが可能です。

NISSHAの力覚センサー

NISSHAで開発している力覚センサーは、フィルム状のセンサー表面で3軸方向の力を多点計測することが可能です。

また、1mm以下の厚さでフィルムを製作できることに加え、容易に変形できるため曲面などに柔軟にフィットします。多点計測が可能でありながら、搭載性が優れており、フィルムのサイズも小型から大型まで幅広く対応可能です。

このフィルム状の力覚センサーを複数個組み合わせることで、6軸に対応した力覚センサーとして活用することができるかもしれません。また、従来の力覚センサーでは実現できなかった領域でも貢献ができると考えています。ご興味を持っていただけた方は、まずは一度お気軽にご相談ください。

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