電子部品製造で活躍するスクリーン印刷について解説

古くから文字や模様の印刷を行う際に使われてきたスクリーン印刷の技術は、エレクトロニクス分野でも活用が進んでいます。

スクリーン印刷技術を活用することで精密な電子デバイスを大量に早く作ることができるようになりました。スクリーン印刷の基本情報やエレクトロニクス分野での活用事例、今後期待される活用方法などを解説していきます。

スクリーン印刷は孔版印刷の一種で、文字や図柄の形状に開口したスクリーンマスク(版)を通して基材上にインクを転写する印刷方法です。
スクリーン印刷では、つぎのような流れで印刷がおこなわれます。

1. スクリーンマスクの上にインクを盛る。
2. スキージと呼ばれるゴム製のヘラを使ってスクリーンマスクを印刷基材に押し当てる。
3. スキージでインクを掻き進め、開口部を通して基材にインクを押し当てる。
4. スクリーンマスクが基材から離れると、開口パターンが基材上に転写される。

印刷原理が単純で、多少の凹凸があっても印刷が可能であり、ペースト状であればどのような材料でもインクとして使用できるので、さまざまなものに対して印刷することができます。古くから衣類や食器などの道具類、電気製品などの表面に文字や模様を印刷する際に用いられてきました。

スクリーン印刷ではスクリーンマスクの選定が品質に影響を与えます。

スクリーンマスクには繊維を網目状に編んで作られたスクリーンメッシュが用いられます。

メッシュ繊維は直径数十ミクロンと非常に細いもので、このスクリーンメッシュの上に感光性の乳剤(レジスト)膜を形成し、現像することで印刷パターンを開口加工します。

スクリーンメッシュの密度は印刷パターンの精密さを決める重要なファクターです。メッシュの密度は1インチ(約25.4mm)あたりの繊維の本数を表す「線数」という基準で示されます。パッケージ資材などの一般的な印刷では100線前後のスクリーンマスクが使われており、電子部品などの精密なパターンを印刷する場合には300~500線の高密度な版が使われています。

また、スクリーンマスクの繊維にはポリエステルのような樹脂繊維だけでなく、微細なパターンを印刷する場合はステンレスなどの金属繊維も使われます。かつては目の細かい絹の繊維が用いられていたので、今でもスクリーン印刷全体を指して「シルクスクリーン印刷」と呼ばれることもあります。

電子部品製造で利用されるスクリーン印刷

スクリーン印刷をエレクトロニクス分野で活用する技術開発が進んでいます。決まったパターンを高速で大量に加工できる印刷技術は電子デバイスの配線形成には最適で、その技術開発は「プリンテッドエレクトロニクス」と呼ばれています。そのなかでもスクリーン印刷は広く活用されている技術です。
プリンテッドエレクトロニクスでは、目的に合った導電材料を選択することと、その材料を精密に印刷することが重要になります。スクリーン印刷においてもこの二つの要素開発が進んでいます。

インクの種類

スクリーン印刷は材料選定の自由度が高い印刷方法です。配線の印刷には一般的に銀ペーストが使われていますが、選択肢は他にもたくさんあります。たとえばカーボンペーストもよく使われる材料です。

銀は硫化が進みやすいため、湿熱環境に対する耐久性が求められる用途では、銀の替わりにカーボンペーストが使用されます。また、機能的に高抵抗な電極や配線が必要な場合にもカーボンペーストが活用されます。

積層配線を作るなど焼結加工が必要な用途では、銅インクが使われることもあります。さらにPEDOTのような導電性高分子材料など、バインダー樹脂に分散できる材料の選択肢が広いことがスクリーン印刷の特長です。

インク膜厚

配線の抵抗値の制御が大切なプリンテッドエレクトロニクスにおいて、グラビアやインクジェットといった他の印刷工法と比べて、インク膜厚を厚く構成できることもスクリーン印刷の利点となっています。

印刷パターンの微細化

印刷精度の向上という点では、微細なパターンを形成できるスクリーンマスクの開発が進みました。

高密度なステンレスメッシュ版や、金属薄板をレーザーなどで開口したメタルマスク版などの登場により、印刷パターンの微細化が進み、スクリーン印刷は電子デバイスの製造に欠かせない技術になりました。

現在では線幅100μm以下の微細な配線の印刷が可能です。

スクリーン印刷で製造される電子部品の用途

スクリーン印刷で製造された電子部品はさまざまな用途で使われています。

たとえば自動車のリアガラスに搭載されている防曇ヒーターはスクリーン印刷によって印刷加工されています。ヒーターの電熱線印刷には銅ペーストが使われます。スクリーン印刷は多少の立体曲面上でも印刷ができるので、自動車のリアガラスにも問題なく印刷できます。

他にも民生用電子機器の分野ではタッチパネルや圧力センサーといったセンサー部品や、積層セラミックコンデンサ、積層インダクタなどの電子部品の製造で、また医療機器の分野では血糖値測定器用センサーストリップのカーボン電極の印刷工程でスクリーン印刷は用いられています。

より小型で薄型、軽量、低価格が求められるこれからの電子デバイスの製造にはスクリーン印刷は最適な製造方法です。在庫管理や販売管理で需要が膨らんでいるRFIDタグなどの安価で大量に必要となる電子デバイス向けなどで、スクリーン印刷の用途は今後さらに膨らんでいくことが予想されます。

進化するスクリーン印刷

スクリーン印刷は今も進化を続け、新たな電子デバイスへの活用が期待されています。例えば伸縮性のある電子デバイス(ストレッチャブルエレクトロニクス)への活用です。

近年、医療やヘルスケアの分野で、衣服のように体に身につけるウェアラブルデバイスの開発が活発になっています。ウェアラブルデバイスでは体の動きに追随して伸縮するストレッチャブルな配線が必要ですが、一般的な金属配線ではこのような伸縮に対応することができず、簡単に断線してしまいます。

そこで、スクリーン印刷により柔軟でかつ導電性のある配線パターンを開発する取り組みが進められています。

スクリーン印刷は印刷する材料の自由度が高いところが特長です。スクリーン印刷の導電インクはバインダー樹脂と導電性フィラーで構成されています。バインダー樹脂の柔軟性を高め、かつ樹脂層が伸ばされても接点が保たれる導電粒子を分散した印刷膜を形成することで、伸縮性と導電性を両立する配線パターンが実現するのです。

近い将来、スクリーン印刷により配線加工されたウェアラブルデバイスが開発され、電子デバイスを身に着けていることすら分からなくなるかもしれません。

また、伸縮性のある配線を形成する技術は、プラスチック成形品に電子部品を組み込むインモールドエレクトロニクス(IME)の分野でも活用されています。

インモールドエレクトロニクスの加工では金型内に配線フィルムを挟み込み、射出成形の熱圧でフィルムも同時に成形します。この成形による延伸に耐えられる配線を形成する技術としてスクリーン印刷は適していたのです。この技術は、イヤホンのように小さな製品のなかに電子部品を組み込む技術として開発が進んでいます。

お客さまの期待に応えるOEMパートナー

NISSHAはスクリーン印刷技術の開発を通してプリンテッドエレクトロニクスの発展に貢献します。

NISSHAはタッチパネルなどの電子デバイス製造においてスクリーン印刷を活用してきました。枚葉方式だけでなく、フィルム幅500㎜に対応する量産性に優れたロール to ロール方式のスクリーン印刷設備を保有し、製品開発から量産まで一貫したサポートが可能です。

線幅100μm以下での高精度なパターニング技術の開発や、Ag、カーボン、PEDOTなどさまざまな導電材料を使いこなすノウハウの蓄積により、スクリーン印刷による新たな電子デバイス開発にも日々取り組んでおります。

ご要望やご質問があればお気軽にお問い合わせください。

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