フィルム基材にも適用可能
ウエットエッチングによるパターニングの特徴を解説

プリント基板やフレキシブル基板(Flexible printed circuits、FPC)などを製造する際には、「エッチング」とよばれるプロセスが必要です。エッチングは、材料の一部を腐食により除去して任意のパターンを形成する技術であり、基板上に銅配線をパターニングする際などに活用されます。

エッチングには、
1. エッチング液を使用する「ウエットエッチング」
2. エッチングガスを使用する「ドライエッチング」
の2種類があります。

製品の種類や加工精度などに応じて、適切なエッチング方法が選択されます。

NISSHAではこの中でも「ウェットエッチング」の製造プロセスを導入しており、フィルムへの両面同時パターニングや、高精度エッチング、大面積の加工を得意としています。

そこで、当記事ではウエットエッチングに着目し、その概要やメリット、形成されるパターンの特徴などを解説します。

ウエットエッチングは、腐食作用のあるエッチング液を使用してパターニングを行う方法です。

フォトリソグラフィプロセスにより微細なレジストパターンを形成した基板にエッチング液を作用させます。
すると、レジストで保護されていない箇所の薄膜が腐食により除去され、レジストパターンと同様のパターンが薄膜層に転写されます。

エッチング液を作用させる方式としては、

  • ディップ方式:被エッチング物をエッチング液に浸す方法
  • スプレー方式:被エッチング物にエッチング液を噴霧する方法
  • スピン方式:回転台に被エッチング物を取り付けてエッチング液を滴下する方法

などがあります。

対してドライエッチングは、液体ではなくガスを使用したエッチング方法です。

ドライエッチングに関しては別の記事で詳しく紹介しています。そちらもぜひご覧ください。

ウエットエッチングのメリット

ウエットエッチングには、以下のようなメリットがあります。

量産性に優れる

シート状の基板の場合、ウエットエッチングは一度に数十枚のシートをバッチ処理することが可能です。またフィルム基板であれば、生産性に優れたロール to ロール方式を適用できます。
複数枚の同時処理や、連続的な加工を行えるという点でウエットエッチングは量産性に優れていると言えます。

一方、ドライエッチングでは基板を真空チャンバー内のステージに固定してエッチングを行います。そのため1プロセスで処理できる基板は1枚だけです。ドライエッチングは時間当たりのスループットは低いですが、ナノサイズの微細なパターニングが可能です。シリコンウェハのエッチングにはドライエッチングが使われています。

低コスト

ウエットエッチングでは、ドライエッチングと比較するとコストを安価に抑えることが可能です。

ウエットエッチング装置は、おもに液槽と乾燥炉から構成されるシンプルな装置です。そのため、真空チャンバーやプラズマ装置を使用するドライエッチング装置と比較すると比較的安価で入手可能です。

装置の導入や消耗品にあまりコストがかからない点は、ウエットエッチングの大きなメリットといえます。

基板へのダメージが少ない

ウエットエッチングの場合は、基板へのダメージが比較的少なくて済みます。
ドライエッチングでは基板がプラズマによりダメージ(欠陥形成など)を受けてしまいます。
一方でウエットエッチングでは大きなダメージが発生する可能性も低く、基板への影響を抑えることができます。

ウエットエッチングにおけるパターニングの特徴

等方性のパターンが得られる

ウエットエッチングは、等方性のパターン形成が主となります。
ウエットエッチングの工程においては基板がエッチング液に腐食されることでエッチングが進行していきます。
基板上に残すべき箇所はレジストで保護されていますが、エッチング液はそのマスクに対して垂直に進行するだけでなく、水平方向にも進んでいきます。
そのため、得られるパターンは等方的(垂直方向と水平方向に進行)となります。

一方、気体を使用するドライエッチングの場合は、腐食の方向をコントロールすることができ、基板に対して垂直方向から作用させることが可能です。そのため、異方的(垂直方向のみに進行)なパターンとなります。

ミクロンレベルの加工に適している

ウエットエッチングは、ミクロンレベルの加工に適しています。

上述の通り、ウエットエッチングは等方性エッチングが主となるため、加工精度が微細になるにつれてパターニングが困難になります。半導体回路など、ナノレベルの微細加工には向いていません。

そのため、FPCやプリント基板向けのミクロンレベルの加工に多く用いられています。

フィルム基材に適用可能

FPCなどのフィルムデバイスを製造するには、フィルム基材上に形成した材料膜(銅薄膜など)をエッチングする必要があります。このようなケースでは、ウエットエッチングが最適です。

フィルム基材上でのパターニングにドライエッチングを用いると、材料膜ではなくフィルム基材自体がエッチングされてしまう場合があります。また、ドライエッチングでは加熱処理が必要なこともあるため、加工できるかどうかはフィルムの耐熱性にも依存します。

ウエットエッチングであれば、これらの問題は起きません。フィルム基材上にパターンを形成する際には、ウエットエッチングの使用をおすすめします。

NISSHAはウエットエッチング加工のエキスパートです

NISSHAのフォトエッチングプロセス

薄膜のパターン形成(Line/Space =10/10µm)

両面へのフォトエッチングのイメージ

NISSHAは、ウエットエッチングによるフィルム基材へのパターニング加工を行っています。

NISSHAの保有技術

  • ロールtoロールによる大量生産
  • 加工精度10μmまでの精密加工
  • 大面積へのウエットエッチング加工(最大500mm×1,000mm)
  • 両面パターニング

各種フィルムデバイスの製造において、NISSHAのロールtoロールによるウエットエッチングプロセスを活用すれば、高精密なパーツの量産が可能となります。さまざまな加工ニーズにお応えできますので、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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