昨今では「完全自動運転」を実現するために、様々な取り組みや技術開発が進展しています。
実際に、国土交通省発表の自動運転の実現に向けたロードマップ(2017)では、2025年をめどに
を始動させるといった、具体的な目標が掲げられています。
この自動運転の実現にあたり、盛んになっているのが自動車の運転をサポートする「ADAS(Advanced Driving Assistant System|エーダス)」の開発です。 ADASはブレーキアシストシステムやABS(Anti-lock Braking System)、前方衝突警告など、ドライバーをサポートするシステムの総称であり、将来的には完全自動運転システムにも組み込まれると期待されています。
時間や天候、路面の変化など刻々と変わる走行環境においてADASを正常に機能させるためには、車両の走行状況を正確に把握する必要があります。
そのためにレーダーやカメラなどの各種センサーが重要な役割を担っており、これらセンサーの性能がますます問われるようになってきています。
この記事では、ADASそのものに関する解説に加えて、ADASの実現に必要不可欠なセンサーの開発動向や各種センサーの性能を最大限に発揮させるためのフィルムヒーター技術について解説します。
Contents
ADAS(エーダス)はAdvanced Driver-Assistance Systemsの略称で、先進運転支援システムと呼ばれています。ドライバーに代わって自動車を制御するなど、運転を支援するシステムを総称してADASと呼びます。
ADASは自動車の安全性と利便性を向上させるために開発されたシステムです。具体的には下記のような機能があります。
ADAS搭載車両が増えることで、交通事故の低減につながります。完全自動運転の実現のためには、ADASの機能向上に加えて、ADASを普及させることが必要不可欠です。
車両の安全性や利便性、快適性向上を目的に、現在も新たな機能が開発され続けています。
ADASを正常に作動させるためには、走行状況を把握しなければなりません。 走行状況を把握するためには様々なセンサーが必要になります。
例えば、カメラやLiDAR、ミリ波レーダー、GPS、慣性計測ユニットなどが一般的に挙げられます。 これらのセンサーで取得した情報をうまく組み合わせることで、ADASを実現しています。
ADASに用いられる各種センサーは年々進化を続けています。特に盛んであるのが、LiDARの開発です。 LiDARはLight Detection And Rangingの略称で、レーザーを用いて物体の検知や距離測定を行う技術です。LiDARは、ADASの中心的な役割を担うセンサーです。
従来のLiDARはレーザー光源と検出器をモーターで回転駆動させて自動車の周囲を360°検出する方式が主流でした。しかしこの方式は駆動装置が必要なために大型で、製造コストも高くなります。そのため現在は、駆動部を持たず比較的安価で製造できるソリッドステート式と呼ばれるLiDARの開発に力が注がれています。ソリッドステート式LiDARでは、MEMS方式、受光素子分割方式、光フェイズドアレイ方式など多様な方式の研究開発が進められています。
MEMS方式
MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)を利用して微細なミラーを走査する方式です。比較的広範囲の状況を検知でき、解像度が高いところが特長です。一方でMEMSの製造コストが高い点は課題です。
受光素子分割方式
ダイオードなどの受講素子を多数配置することで、自動車の全周を検出できるようにする方式です。低コストで実現できる一方で、配置する受光素子の位置や数により解像度が左右されます。
光フェーズドアレイ方式
アレイ状に配置した光源の位相を制御することでレーザーを走査する方式です。物理的に駆動する部品が無いので耐久性やコストの面で優れていますが、解像度など性能面ではまだ開発が進められている段階です。
また、各センサーから得られた情報を組み合わせることで、単一のセンサーでは得られない情報の取得を狙いとする「センサーフュージョン」に関する技術開発も進められています
ADASのセンサーを保護するカバーパーツの大きな役割は二つあります。
ひとつはセンサーが常に正常に機能するよう、電波や光などの信号の送受信を阻害しないことです。そのため、カバーパーツには透明性や電波透過性が求められます。
ふたつめの役割は外部環境からセンサーを保護することです。車両の外側に取り付けられるセンサーは風雨にさらされることも多いため、カバーパーツにも耐久性が求められます。
カバーパーツの材料としては、耐久性や衝撃耐性に優れたオレフィン系エラストマー樹脂(TPO)やポリプロピレン樹脂(PP)などが一般的に使用されています。
カバーパーツの機能が優れていて電波透過性に影響がなかったとしても、天候の影響で性能が悪化してしまう可能性があります。例えば冬の着雪によってセンサー部が隠されてしまうといった問題が考えられます。その解消手段の一つとしてヒーター技術が注目を浴びています。
ADASで用いられるセンサーの多くは、雨や雪、霧などの天候の影響を受けてしまいます。
特に、寒冷地で使用される自動車では、雪が付着するだけでセンサーの精度は極端に落ちてしまうため、速やかに雪を除去する必要があります。
雪を除去する手段の一つとして、センサーの表面にヒーターを設置する案が採用されています。
エンジン始動直後からADASを正常に作動させる必要があるため、センサーの表面に取り付けるヒーターには2つの機能が求められます
一つは急速加熱性です。加熱時間が長いと、雪を除去する時間が長くなり、ADASが正常に作動しない期間が延びてしまいます。 そして、もうひとつ求められるのが電波透過性です。電波透過性はセンサーの精度に影響を与えるため、絶対に必要な機能です。
また、センサーは自動車の外部など人目につきやすい場所に搭載されていることもあります。 ヒーターは車両の魅力的な外観を損なわないように、外装加飾の下に隠れるように存在することも必要です。
NISSHAは自動車外装部品向けに、ワイヤーヒーターを埋め込んだプラスチック成形パーツを開発しました。
この記事でも取り上げたように、フロントパネルの内側にはLiDARなどのセンサーが組み込まれます。そのため、寒冷地仕様の自動車では着雪によりセンサーの機能を損なわれない対策が必要です。
そこでNISSHAでは、パネル表面に付着した雪を急速に融解するワイヤーヒーターを埋め込んだ成形品を開発したのです。このヒーター埋め込み型フロントパネルは、EV用のフロントパネルとしてすでに採用されています。
ヒーター埋め込み型外装部品は、次のような特長を備えています。
・メタリック調でありながらセンサーの機能を阻害しない電波透過性を確保 ・塗装レスで環境負荷の少ないフィルムインサート成形プロセスを採用 ・メタリック調に限定されない、多様なデザインの実現
フロントパネル裏面に埋め込まれた融雪用ヒーター
NISSHAでは、このような自動車外装用プラスチック成形品の受託製造に対応します。自動車用プラスチック成形品の製造や開発に関するご相談は、ぜひNISSHAまでご連絡ください。
くわしくは製造サービスのwebサイトをご覧ください。
フィルムディバイス開発や量産におけるご相談はお気軽にご連絡ください