エッチング加工とは、酸やアルカリの薬液によって素材表面を腐食除去することで、目的の形状を生成する加工技術です。
もともと銅版画や印刷製版などに使われる技術でしたが、現在では電子回路や半導体、アンテナなどさまざまな工業製品の加工方法として使われています。
エッチングできる金属膜の材料には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銅ニッケル(CuNi)、アルミ(Al)、銀(Ag)、金(Au)、ITO(酸化インジウムスズ)、SUS、チタン(Ti)、白金(Pt)などがあります。
今回の記事ではフィルムデバイスの導電パターンによく利用される銅、銅ニッケル、ITOについて、用途や特長を紹介します。
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銅はエッチング可能な金属材料としては最もポピュラーな物質です。主な特長や用途を紹介します。
銅は電気抵抗が低い物質です。そのため、プリント基板の配線パターンの材料としてよく使われています。 銅には腐食しやすい性質が有るため、多湿の環境で使用する場合などは保護膜による腐食防止の対策が必要になります。 また耐熱性の面では、銅はアルミニウムや鉄よりも熱伝導率が高く、さらに高温で軟化する特長を持っています。そのため、基板の配線として使用する場合は放熱対策が欠かせません。
銅は、低抵抗でパターニングしやすいため、プリント基板の配線に非常に多く使われています。また、電磁波の反射、吸収効果が高いことから電磁波シールド層にもよく使われます。
電磁波シールド層は、例えばプラスチックのフィルム上に銅箔を積層することで形成されます。
身近な製品では、ディスプレイのタッチパネル用電極に銅が使われています。
銅は非透明の材料ですが、10μm程度の細線にエッチング加工することで肉眼では視認できないセンサーパターンを形成することができます。また、銅配線に光が反射して目立つことを防ぐために配線を黒化処理する場合も有ります。
銅配線のタッチパネルは電子黒板などの大型タッチパネルに使われます。スマホなどの小型タッチパネルのセンサー電極にはITO透明導電膜が使われることが一般的です。しかしITOは比較的抵抗が高い材料なので、大型タッチパネルでは応答性が悪くなることが課題でした。ITOよりも低抵抗な銅の細線で形成したタッチパネルは、この応答性の課題の解決策として活用されています。また、銅はメッシュパターンにすることで、透明性を確保できます。
銅のその他の用途には、アンテナやフィルムヒーターなどが有ります。
次に銅ニッケルの用途と特長を紹介します。
銅ニッケルは抵抗が高い材料です。銅の抵抗率が1.7×10-8Ωm程度に対して銅ニッケルは4.9×10-7Ωm程度です。このため、外力による変形(伸び縮みや歪み)が生じたときに、銅と比べて大きな抵抗値変化が生じることが銅ニッケルの特長です。
また、銅ニッケルは電気抵抗の温度依存性が低い物質でもあります。そのため、広い温度域で安定した電気出力を得ることができます。
特長の章で説明したように、銅ニッケルをパターニングした配線では外力による配線基板の伸び縮みや歪みに対して大きな抵抗値変化を検出することができます。この性質は、ひずみゲージや荷重センサー、位置センサー、振動センサー、変位センサーなどに活用されています。
また、温度依存性が低いという特長から、屋外の厳しい環境下でも安定したセンシングが可能です。歪ゲージは橋梁やトンネルのような社会インフラの経年劣化のモニタリングにも使用されています。
このような応力センサーの他に、銅ニッケルは温度センサー、熱電対などにも使われています。
構造物や機械の開発現場や品質管理などで使われるセンサーの用途が多く見受けられます。
ITO(Indium Tin Oxide)は酸化インジウムに酸化スズが数%加えられた化合物(酸化インジウムスズ)です。
ITOは、透明でありながら電気を通すことができるのでさまざまな製品に用いられています。
ITO(Indium Tin Oxide)は結晶化した無機材料で全光線透過率90%以上の透明な材料です。
ITOの抵抗率は3×10-6Ωm 程度で、銅と比べると高抵抗な導電材料です。ガラスや樹脂フィルムの表面に形成した薄膜をエッチングでパターニングするのが一般的です。
透明性に優れるITOはディスプレイパネルやウィンドウガラス上に形成する配線材料として広く活用されています。ただし、硬く脆い性質を持っているため、曲面への配置や折り曲げるデバイスへは適用できません。
ITOは透明であるという特徴から、様々な用途で用いられています。
<用途例>
・液晶パネル
・有機ELディスプレイ
・電子ペーパー
・タッチパネル用の電極
・太陽電池の電極
・透明フィルムヒーターの電極など
上であげた例の一つである透明フィルムヒーターでは、視認性が重要なミラーやウィンドウガラスの曇り止めのために使われています。
※NISSHAでは透明性が高く、なおかつ急速加熱が可能な透明フィルムヒーターを開発・製造しています。
当記事ではエッチングできる金属材料の用途や特徴を紹介しました。各材料には特徴があり、用途や仕様によって使い分ける必要があります。
NISSHAではロールtoロールのフォトエッチング加工技術により、さまざまな金属材料のエッチングが可能です。
ITO膜の他、厚さ10μmまでのCuやCu合金薄膜などのパターニングの量産に対応いたします。
また、エッチング加工において以下の強みを持っています。
・加工精度 10~40μm(加工精度は材料によって異なります) ・両面エッチングプロセスに対応可能 ・大面積に対応可能(1000mm×500mm)
興味を持たれた方はぜひ一度お問い合わせください。
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