私たちの身の回りには多くの入力インターフェース(機械と人間とをつなぐ接点)があります。これらを操作するとき、私たちは無意識のうちに入力に対する反応を触覚によって感じています。タクタイルとは「触って感じられること、反応」のことを指し、入力インターフェースをデザインする上で大切な要素となっています。今回はタクタイルについて見ていきます。
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タクタイル(英Tactile)とは「触覚の」「触って感じられる」という意味です。身の回りの多くのものにさまざまな形式の入力インターフェースが使われていますが、タクタイルはその使い心地を決める重要な要素です。
まずタクタイルには入力が受け入れられた、という応答を感触として返す役割があります。電化製品や自動車に使われているボタンの多くに押して入力がされたときにプチッ、カチッといった感触があります。ユーザーは感触を頼りに自分が行った入力が完了したということを直感的に知覚しています。逆にタクタイルがないときちんと入力が完了したのかわからず、不安を覚えることにつながります。
またタクタイルによって製品のイメージもデザインすることができます。軽い操作感は俊敏に扱うことのできるスピード感を、逆に重たい操作感は質実剛健な高級感を与えることができます。更に応答を高度化することによってタクタイルは単に入力を完了したという応答を示すだけでなく、インタラクティブな機能を持たせることもできます。
タクタイルは大きくパッシブなものとアクティブなものに分けることができます。パッシブとは静的、受動的といった意味ですが、タクタイルについて言えばボタンやスイッチなどあらかじめ機械的に触感が決められたものです。一方でアクティブは動的、能動的といった意味で、例えば振動子などで触感を積極的に発生させるものになります。
パッシブなタクタイルは身の回りの製品にも広く使われています。電化製品などのボタンを押したときを考えてみましょう。感触がスカスカなのか、重量感や粘りがあるのか、ある一定のストロークでカチッというクリック感があるのか、などタクタイルには多くの可能性がありユーザーが受ける印象も異なってきます。
パソコンに使われるキーボードもボタンの集合体ですが、タクタイルは重要なセールスポイントのひとつになっています。打鍵の際に独特のクリック感を与えるメカニカルキーボードには根強いファンがいます。タクタイルにあわせて独特な打鍵音も発生するため、聴覚との複合的な印象が商品価値につながっています。キーボードの他にもゲームのコントローラ、自動車の車内ボタン、電化製品のスイッチなどにもタクタイルは利用されています。
タクタイルが利用されているのはボタンやスイッチだけではありません。ハイエンドオーディオ機器のボリュームつまみには、回転させるときに独特の粘りがあります。間違って触れた場合でも動きにくいという実用的な機能のほかに、触った印象によって高級感を抱かせ、商品価値の向上につなげるという狙いもあります。また回しきったときにOFFとなるようなボリュームの場合、終端部でカチッというクリック感を持たせてユーザーにOFFになったことを知覚させるものもあります。
パッシブなタクタイルの例で紹介したようなインターフェースでは、あらかじめ決まったタクタイルが得られるよう設計されています。
一方で入力に対して積極的にタクタイルを発する製品があり、これはハプティクスともよばれます。スマートフォンなどが身近な例で、画面をタッチしたときに特有の振動をさせるよう設定することができます。指でのタッチを検知すると内部の振動子が積極的に振動し、「タッチにより反応した」とユーザーが感覚で分かるようなタクタイルを与えています。
アクティブなタクタイルの利点は入力に対して任意のタクタイルが与えられることです。例えば入力に対して問題がないときは一回の振動、エラーがあり入力が受け入れられない場合は二回連続して振動させるなど、タクタイルにフィードバック機能を持たせることができます。
このようなアクティブなタクタイルは、実は古くから用いられています。その一例が飛行機です。
飛行機は十分な速度がない状態で機首を上げすぎたりすると、翼からの揚力を失って操縦不能となり、失速の危険性が発生します。
その際、操縦桿を意図的に振動させるスティックシェイカーというものが備わっています。失速の発生状況や深刻さにあわせて振動が変化します。
失速の危険があるような緊迫した状況では警報やランプによる情報も見落としてしまう可能性があるため、タクタイルとしてパイロットに直接危険を知らせることにより安全性を高める工夫がされています。
タクタイルは一般に入力に対する反応として与えられるため、タクタイルの高機能化には入力インターフェースの高機能化も同時に求められます。
現在スマートフォンなどタッチパネルを使用しているデバイスでは1点あるいは多点でのタッチを検知し、入力インターフェースとしていますが、タッチの強さや力の向きなどは通常検知していません。インターフェースが更に発展してタッチの強弱を判別できたり、指で加えている力の方向などが検知できたりするようになれば、入力に応じてタクタイルの幅も広がります。
NISSHAのセンサーはフィルム状でありながら三次元的な力をリアルタイムで多点的に計測することができるという特徴があり、こうした次世代の入力インターフェースへの応用も期待できます。
またタクタイルをデザインする際の開発ツールとしてもNISSHAのセンサーは多くの可能性をもっています。タクタイルは定量化することが難しい特性です。例えばボタンの場合、定量的に技術力を測る一般的な指標として「ストロークに対する反力を示すグラフ」があります。しかしこれはタクタイルの一面的な特性しか表していません。素早く連打した際の可動部の慣性や粘性もタクタイルには大きく影響します。そのため指が触れている箇所にどのような力が作用しているのか、詳細かつリアルタイムに計測する必要があります。
例えばNISSHAのセンサーを使ったグローブを装着して計測すれば心地のいいタクタイルを得られるときの力のかかり方などがわかり、より良いインターフェースのデザインにつなげられることが期待されます。
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